土日を明けた月曜日、俺はリツのもとへ行った。
「明日、あと一回だけ、ミーのピアノ見ていってもいいか?」
ほんとは毎回見に行きたいけど、それはさすがにできねえし…あと一回。
あと一回だけ、ミーの演奏が聴きたい。
ピアノを弾いているミーが見たい。
「明日…ですか?」
「…だめか?」
「だめじゃないんですけど…明日はちょっと」
ばつが悪そうな顔をするリツ。
「明日、なんかあんのか?」
「あっ、いやっ、なにも。明日じゃなくて、木曜日にしましょう」
「…」
「な、なんですか」
「気になるだろ」
てなわけで、俺は無理やり次の日リツの家にお邪魔した。
でも、後悔した。
ミーにピアノを教えているのは、リツのお母さんではなく、音大に通っているというお兄さんのミツキだった。
「おや、リツキ、だれだい?その子は」
「三井さんの同級生。ピアノを習うか迷ってるみたいで」
「アンタ、また来たの?てゆか本気だったの?ピアノ習いたいって」
俺に気づいたミーが怪訝そうな顔をした。
俺にはそんな顔するくせに…
ミツキには、違った。
「三井ちゃん。そこはね、…ちょっといいかな」
ミツキがお手本で演奏をした。
その姿をポーッとした表情で見つめるミー。
そんな顔、はじめて見た。
すぐにわかった。
ミツキが好きなんだ。
俺は「失礼します」と家をあとにした。
…なんだ、これ。
心臓が、痛え。
ものすげー、痛え。
ミーのあんな顔、見たくなかった。
あの顔を…
俺に、向けてほしかった。
嫉妬まみれの俺。
カッコ悪すぎて、むかつく。



