先生。



そうわかっていたのに。





「…行くな」





低く震えたその声が、シンとする部屋に響いた。


私の鼓膜を、おかしいくらいに揺さぶって、動きを止める。





「行くな」





どうして行くななんて言うの?


キープだから?



ああ、それとも…





「私がいないと、あの女との関係が切れるから…?」





引きとめられて、喜んでいる自分がいた。


裏切られても、また期待した自分がいた。



だけど先生は、私のその言葉に、すぐに否定の言葉を入れてこない。


だから、きっと図星なんだろうな。





「…先生って自分がどれだけ最低で残酷かわかってる?」





もう泣かない。


先生のために流した涙が多すぎて、涙さえもう出てこない。





「寂しさを埋めるためにもう利用しないで」





…言った。