「俺は単純に嬉しかったんだ。おまえに『好き』って言ってもらえて…」
「………」
「俺だって…おまえのこと、好きだから…」
「………」
「………」
沈黙が痛い。
でも、とうとう言ってしまった。
案外簡単に、サラッと言ってしまった…。
とうとう…言ってしまった!
恥ずかしくなって、つい俯いてしまう。
…が。
桃李がいつの間にか、顔をひょっこりと出してこっちをじっと見ていることに気が付いた。
なぜかその目付きは悲しそうで、俺を哀れむような表情で見ている。
何だその目は…。
「な、夏輝、あまり無理しなくてい、いいんですよ…?す、すみません…気を遣って貰っちゃって…」
「…はぁっ?!」
正直な想いを伝えたのに…。
好きって言ったのに、誤解がとけない?
な、何で?!
…その時、気付いてしまった。
正直、素直はもちろん大事だが。
その前に、厄介な難題があったのだった。
それは、俺の長年の身勝手な事情による振る舞いの誤解を解かねばならない。
それはもう、洗脳レベルで。
恥も照れも、すべて捨て去って突っ込んでいかねばならないのである。
「だ、だ、だって…な、夏輝が私を好きになるワケ、ないでしょう…」
(え…)
何…言ってんの?
「俺が…おまえを?好きになるワケない?…はぁっ?!何で?何でそうなんの?!」
「だ、だって私みたいな、みずぼらしいちんちくりんなダサ子ですよ…そんなワケじゃないですか…」
「…はぁっ?!…え、えぇっ?!」
「そ、それに…い、いつも夏輝をイライラさせて、怒らせて…な、なのに、わ、私を好きだなんて、ないです…」
「え…」
「で、でもお気遣いの気持ちだけは、いただきます…あ、ありがとうございます…」
本当に、何…言ってんの?
俺が、桃李を好きになるワケがない?
みずぼらしいちんちくりんダサ子?
いつもイライラさせて、怒らせて。
桃李を好きだなんて、ない…?
何の…こと?
(あ…)
…これが、身勝手な事情と振る舞いによる。
その積み重ねの結果だった。
『ドジ踏んだら、すぐに大声で雷を落とし、冷たい言葉を投げ掛ける』
『ダメだの、ドジだの、挙動不審だの…上から目線でくどくど小言をいう』
『しまいには、何かにつけてはバカバカと、桃李をバカ扱いする。家では苺さんに、学校では夏輝に…これで、自尊心がズタズタにならないワケなくない?』
(そんな…)



