その後、涙を流しながらも再び眠りについてしまう。

そんな中で、温かい夢を見た。



…誰かにお姫様抱っこをされている夢。



顔は見えなくて、誰だかはわからないけど。

私を包んでくれるその腕は、力強くて、暖かくて。

私の流した涙を拭ってくれるその指は、優しくて。

じんわりと、温度が伝わってくる。



…あぁ、これが。

守られている、大切にされているって感覚なんだ。と、思った。



これは、夢なんだけど。

現実の世界でも、こうして私を大切にしてくれる人がいるのかな…。

愛してくれる人、現れるのかな…。



少なくとも、その相手は夏輝ではないことは、確かだ。







…そんな想いを抱えたまま、また時は過ぎる。

私お得意の脅威の集中力で、ラストスパートに詰め込み勉強をした結果、星天高校に見事合格。

晴れて、私は夏輝や理人と同じ高校に入学することになった。



晴れて、なのか。

と、いうには、不安が大きい。

その不安が的中し、三人また同じクラスになってしまった。



そして、更に不安は的中する。



『…桃李!何やってんだおまえは!』

『それから!眼鏡ずれてる!人前で絶対眼鏡をはずすな!』



中学の時とは変わらない、雷、小言は続く。

イライラさせたくないから、視界に入らないように、ひっそりしていようと思うんだけど。

どうしてもあっちから関わってくる。

見ていられないんだと思う。



制服がセーラー、学ランからブレザーに変わり。

それが尚一層大人への変化を感じさせており。

また、改めて夏輝を恐いと思い始めてしまった。



これなら、違うクラスがよかった…。

それなら、余計にダメなところを見せずに済んで、冷たく当たられないのに。




しかし、更なる不安、不幸が私を襲う。



もう、この状況に耐えられない。

自分をとても惨めに思う、出来事が。また。




ある日の昼休み。

私が慌てて教室を出ようとしたところ。

逆に教室に入ってこようとした、三年生のセンパイにぶつかってしまった。



しかし、それは夏輝の新しいお姫様で…。




『竜堂くぅーん、痛いー』

『…桃李おまえぇぇぇっ!謝っていけ!』



大人の空気を纏う、お色気抜群のセンパイは、夏輝の腕にしがみついて、私を上から見下ろす。

腕を貸している夏輝も一緒に。

私を上から見下ろし、怒号をあげた。

冷たい目で。




惨めだ。

惨め過ぎる。

こんなの…もう、嫌だ。






王子様の隣にはいつだって、綺麗なお姫様。

少なくとも、惨めに見下ろされている下僕ではない。