(はぁ…)
いつも、小言に雷で。
ドジもするし、私ってダメ人間だな。
いつも、夏輝のイライラを誘ってばかり。
いつも…夏輝に迷惑かけてばかり。
自分が…嫌になる。
そんなことを考えると、ため息も出そうになり、勉強しているペンも止まってしまう。
ふと顔を上げると、目の前には一緒にこたつを囲んで勉強している夏輝と圭織ちゃんの姿があった。
『んーと…こんな感じで合ってる?』
『おっ。いいんじゃね?完璧。出来るようになってきたじゃん。大丈夫だな』
『夏輝の説明、わかりやすいんだもん。ありがとー』
『圭織は元々出来るんだって』
一年二年と同じクラスだった二人は、仲睦まじい様子を見せている。
夏輝は、あの笑顔で圭織ちゃんに笑いかけていた。
…いや、お互い恋愛感情はないことはわかってるんだけど。
なぜか、その光景を羨ましく思ってしまった。
また、胸が痛い。
…もし、私だったら、夏輝はそんな優しい言葉をかけてくれるんだろうか。
出来たことを、評価して褒める言葉とか。
私に…くれるんだろうか。
夏輝は『優しい』のだけれども。
その優しい言葉をかけてもらったことは…無いような気がした。
《これ、おまえが焼いたの?!おまえは天才だよ!》
《おまえの作ったパンは美味いに決まってんだろーが》
パンに関すること以外は、全く見当たらない。
パンを食べている時以外に、あの笑顔を見せてもらえない。
私にはいつも小言で不機嫌なイライラのムスッとした顔しか見せてくれない。
…この時点で、私は格下げの身分だった。
ただ、夏輝に喜んでもらうために、気を引いて繋ぎ止めるために、ただ、パンを焼き続ける。
…それで良かったはずなのに。
心の奥底では、それを納得しきれていないということが、徐々にわかってきてしまった。
そんなことを考えながらの勉強は、身に入るワケもなく、やがて眠気に襲われる。
そのうち寝落ちしてしまい、そこら辺に雑魚寝してしまった。
(なんでだろう…)
例え、私のことを好きにならなくても、目もくれなくても。
それでいいと、思っていたのに…。
(………)
ふと、パチッと目が覚めた。
『…おう。寝落ちしてて今起きた。久しぶりだな。あゆりこそ起きてたのか?』
寝転がっている背中の方から、カサカサと気配がする。
夏輝が…誰かと電話をしてるようだ。
今、何時なんだろ。
寝起きのボーッとした頭で考える。



