黒い感情に、頭が支配される。
《モブはモブらしくしてろや》
《桃李は、優し過ぎる》
《うわっ。桃李ちゃん、このエプロン汚れてるよ?》
《桃李だってたまにはもっと怒ったっていいんじゃないの?》
今までのことが、ぐるぐると頭の中でオーバーラップする。
そこから意識を背けられなかった。
《自分の姿、ちゃんと鏡で見ろって!》
王子様の横には、いつだって綺麗なお姫様。
みずぼらしい、天パ眼鏡ブスの地味ダサ子な下僕ではない。
そうだよね。
(何で…)
黒い感情が、頭や胸の中でいっぱいになる。
どうにも抑えられなくて、体の中に収まりきらなくて。
そして、外に噴き出してしまった。
『…なのに!…なのに!何で夏輝くんは…!』
『…んで…』
『はぁっ?!』
『お願い…死んで』
頭の中を黒い感情に支配されたまま、持っていたホウキの柄をグッと握りしめる。
でも、その指先は震えていた。
フラッと立ち上がる。
『な、何よ…!』
頭の中が、黒い感情に操られる。
自分の意識が持っていかれて、勝手に動く。
ホウキを手にしたまま、フラフラした足取りで里桜ちゃんに詰めよっていった。
そんな私の突然の様子に、里桜ちゃんはますます面白くない顔をする。
『な、何…』
『…今すぐ、消えて…消えて!』
持っていたホウキを里桜ちゃんに向かって振り回す。
『きゃっ…!』
とっさに顔を手で守るが、その手にホウキがバシッ!と当たった。
『…消えて!…死んで!お願い!…消えろおぉぉぉっ!!』
出したことのない低い声を怒号として出して、何度も何度もホウキを里桜ちゃんに向かって叩き付ける。
バシッ!と当たる度に里桜ちゃんは『きゃっ!』と悲鳴を上げている。
私のホウキ攻撃を何度も受けているとそのうち、今度は里桜ちゃんが尻餅をついて倒れた。
『…消えろおぉぉぉっ!…消えろおぉぉぉっ!』
『…ちょっと何なのよ!急にキレ出して!…キモいんですけど!』
『うるさいぃぃっ!…死んでえぇぇっ!』
『きゃっ!…やめっ!…何なのよ!』
ホウキを振り回す私から、里桜ちゃんは床を這いつくばって逃れる。
そんな里桜ちゃんに向かって、虫を叩いて狙い殺すかのように、頭や体目掛けてホウキを叩き付けた。
もう、自分の意識がどこにあるかわからない。
でも、何かに憤りを感じて、それを払拭したくて。
私は大暴れした。



