王子様とブーランジェール




すると、何も答えない私に対して、里桜ちゃんの眉間にシワが寄る。



『…桃李ちゃんが夏輝くんに何か言ったんでしょ?!でなきゃ、夏輝くん急にあんなこと言わないもん!』

『わ、私、何も言ってない!…夏輝と、は、話してないもんっ!』


何のことかわからずにいるも、何も言ってないということだけは伝える。

それに、なぜ私が夏輝に何かを言ってどうかなると思っているのか。

私をバカバカ言ってる夏輝が、そんなバカな私の言うことを聞くと思う?

だが、里桜ちゃんは『ウソ!』と、私の発言をバッサリ否定した。



『ウソ!ウソだよ!…でなきゃ、夏輝くん、里桜と別れるって言わないもん!』

『え…?』



今の話、ホント…?

耳を疑う。



里桜ちゃんは、ぐすっと鼻をすする。



『夏輝くん…里桜に「別れてくれ」って…もう、里桜とは別れるって!』

『そ、そんな…』

『…ここしばらく、夏輝くんずっとイライラしてて…それで、さっき急に…里桜とはもう終わりだって…』



そんな…何で?

だって、一週間前はあんなに濃厚にキスし合ってたのに?

あんなに…仲良さそうだったのに。



何故なのか理解出来ず、言葉に詰まる。

また、何も言わないでいると、里桜ちゃんがこっちをジロッと睨み付けた。

物凄く憎悪が入り雑じっている。

里桜ちゃん…?




『桃李ちゃん…今、里桜のこと、ザマーミロって思ってるでしょ?』

『え…?』

『里桜が夏輝くんにフラれて…実は喜んでるでしょ?』




いきなり、何を言ってくるの?

私、今この話を聞かされて、それだけで混乱してるのに…?



すると、彼女は私の胸を抉るかのようなことを、口にするのであった。




それは、また。

あの苦しみが、やってくる。




『桃李ちゃん…夏輝くんのこと、好きだもんね?』




『な…』




体全体に、ピシッとヒビが入った感覚を覚えた。



何で…何で?

何で、里桜ちゃんが…知ってるの?



一番知られてはならない人に、知られている。

胸に秘めていた、風化するのを待っていた想いを…。



ズバリと真実を突かれて、固まってしまった私を、里桜ちゃんは鼻で笑う。

今までに見たことにない里桜ちゃんの態度だ。




『桃李ちゃん、里桜と夏輝くんの話、嫌そうに聞いてたもんね?…羨ましいけどムカつく!とか思ってたんでしょ?嫉妬、きもいー』