頭がくらくらしてきた時、本当に目の前が真っ暗になった。
『お盛んですなー?…って、何やってんの』
目の前が本当に真っ暗になったと思ったら、そのままグッと後ろに引っ張られる。
目を覆われたまま、後ろへとズルズル引っ張られていった。
『桃李に過激なラブシーンはまだ早い早い』
すると、視界がパッと明るくなって開く。
そこは、さっき理人と宴会をやっていた草影のベンチだった。
『理人…』
『あんなのずっと見ていて、興味あんの?エロ桃李?』
『………』
『…好きな男が他の女とイチャついてるの見て楽しむなんて、もしかしてドM?』
どえむ…って、何。
理人、私の目を覆ってここまで連れてきてくれたんだ。
私に、これ以上あの二人のことを見せないために。
理人の顔を見ると、安心したのかホロッと涙が出てきた。
それは、ポロポロと止まらず。
『…ツライよなー。好きな男が他の女とイチャこいてんだもん。ツライよな』
そう言って、理人は私の頭を撫でている。
その手は…とても温かった。
そうか、私。
薄々は気付いていたんだけど。
夏輝のこと、好きだったんだ…。
だから、夏輝と里桜ちゃんが一緒にいるのを見るのが嫌だった。
仲良くしているのを、見たくなかった。
…あの笑顔を里桜ちゃんに向けているのが、嫌だったんだ。
あの黒いもやもやは、嫉妬だ。
そして、劣等感。
私の黒い感情だった…。
『…理人は何で気付いたの?』
ぬるぬるのミルキングを飲んで、落ち着く。
じゃがバターを食べていた理人は、ははっと笑う。
『だって俺、桃李のこといつも見てるもん。面白いから。桃李のファン』
『もう』
『まあ、桃李のファンは他にもいるけどね』
ファンって何。
だからと言って、私自身が気付かなくて曖昧になっていたことに気付く?
物凄く観察力の高い人だ。
『…俺、桃李の味方だかんね。秋緒も。何があっても。桃李が悪くても』
『…何それ』
それは、何かを先取りして告げられた言葉?
意味がよくわかんない。
…でも、独りぼっちじゃないということは確かで。
嬉しい。
『…ありがと。理人』
『どういたしまして?』
…それから、私の黒いもやもやは一時消えた。
夏輝のことが好きだと自覚したこと。
それと、理人と秋緒が私にはついているということ。
それで、安心したのかもしれない。
…でも、それは一時的なものだった。



