『桃李!…今そっち行くから、そこで待ってろ!』
いやいや。
待ちません。
やらかしてしまったことに気付くと、急に恥ずかしくなっちゃって。
穴があったら入りたくなってしまったのでした。
でも、こんな屋上に穴なんてタイムリーにあるワケはなく。
私…神田桃李は、校舎内へと戻る道、階段室へとそそくさ足を運ぶ。
…夏輝の制止する声を無視して。
ステイだとか。ウェイトだとか。
ごめん。構ってられない。
夏輝の言うことは何でも聞いてきたけど、それだけは無理。
早く、穴に入れてください。
でも、穴はない。
だが、気分が昂ってしまい、呼吸が乱れる。
息が荒くなって、過呼吸みたいになり、頭がクラクラしてきた。
苦しい…。
足取りもよろよろとしてきて、階段を降りている最中に座り込んでしまった。
もう、歩けない…。
階段中腹で、力尽きる。
廊下に降り立つことは、出来ませんでした。
(はぁ…)
階段に座り込んだまま、その端へと移動し、壁に体を預けてもたれこむ。
座っているうちに、徐々に呼吸も落ち着いて楽になってきた。
落ち着いたところで、先程のことを思い返してみる。
(言っちゃった…)
とうとう、言っちゃった。
長年、言えなかったこと。
好きです。って。
思い返すと、恥ずかしくなる。
意味もなくキョロキョロとしてしまい、挙動不審全開。
…なぜか『大』をつけてしまった。
何でだろ。
今、言うはずじゃなかったのに。
どうしても、どうしても引き留めたくて。
流れでつい、言ってしまった。
…私が『好き』と言うことで、何の引き留めにもなってないような気はするけど。
でもでも、夏輝のあの驚いた顔、笑っちゃうぐらい、ポカーンとしていた。
口、開けたままだった。
虫入っちゃうよ。
まさかまさか、私に『好き』って言われるなんて、想像もしてなかったろうに。
(………)
でも、何故だろうか。
この『告白』は、目標にしてきたことなのに。
何の達成感もない。
恥ずかしくて、逃げたくて。
白々しく逃げるようなカタチとなってしまった。
『待て』と言われて、何を言われるのか、恐かったのかもしれない。
手に持ったままの、狭山さんからもらった相手を倒す機械を、ふと見る。
…これをよこせ!って言ってたね。
だから待てって言ったのかな。
慌ててカバンにしまう。
渡さない。渡さないよ。
これは『御守り』だから。



