王子様とブーランジェール




いいもの?

イジメられない、いいもの?



「ちょっと待っててっ」



すると、ヤツはフェンスから離れ、たーっと奥へ走る。

よく見ると、奥にはカバンやらノートやら筆箱やらが散らかっていた。

何で散らかってんの?

その散らかっているモノをカバンに詰め込み、そのカバンを持って再びこっちに戻ってきた。



「待って待って。どこだっけな」



そして、フェンス際でカバンに手を入れて中を探っている。



しかし、いいものって何だ?

狭山から貰ったと言っているあたり、嫌な予感しかしない。



「…あった。…これ!これ見て!」



…嫌な予感は、的中するのだった。



「…あぁっ?!…おまえ!何持ってんだあぁっ!」



それを目にした途端、ザワッとしてしまい、思わずいつもの調子で怒鳴りつけてしまった。

高圧的な態度とか、そんなこと言ってる場合ではない。



な、なんてモノを持ってるんだ!



桃李が手にしてこっちに見せびらかしているものは、テレビのリモコンサイズの黒いプラスチック製の物体だ。

一見、男性用のシェーバーに見えなくもないが。

俺は、実物を見るのは初めてだが、ネットなどの画像で目にしたことがある。



非殺傷性個人携行兵器。

暴漢などの相手に電気ショックを与え、身を守るための護身用具。



スタンガン…!




「…これ、狭山さんがくれたのー!あのね、これでもうイジメられることはないってー」

「………」



そんな呑気に答えちゃって…。

思わず絶句したわ。

桃李…それが何をするモノか、わかってんのか?




まさか、おまえがそんなものを手にする日が来るとは思わなかった…。




「これね、これね、電源入れてパチパチいったら相手の体に押し付けるんだって。そしたら、相手が倒れるんだってー」

「………」

バカヤロー。何でそんなに嬉しそうに説明するんだよ。

「イジメられそうになっても、これを使えば相手が倒れるから逃げられるって、狭山さんが言ってたの」



倒れる…?

何で倒れるか、わかってる?



…だが、これでわかった。

はっきり言って、桃李はスタンガンとは何かを理解していない。

あのテキトーな狭山のことだ。

今、桃李が述べたまんまの説明しかしていないだろう。



なんてモノを与えたんだ、狭山!

許されないわ…!