王子様とブーランジェール






「…おい。本当に行くのか?」

「んー。…うん、まあ」



昼休みの終わりを告げるチャイムが鳴り、小部屋から撤収する。

教室に戻るべく、廊下を歩いていると、後ろを歩いていた咲哉にふと問い掛けられる。



行くって…あれだろ?

大河原さんの合コン。



「………」

曖昧な返答をしたからなのか、無言で返された。

え…ちょっとお怒り?

空気で感じるわ。

気になってしまい、チラッと振り返って咲哉を見る。

すると、そこには。

露骨にムッとした表情が。



「な、何だよ…」



真っ直ぐ、おもいっきり直視されて睨まれてる。

何で!



「…前から言ってるだろ」

「え。え、何?」

「それは違うだろってよ…」



え…。



不意を突かれ、立ち止まってしまうと、咲哉に先を越される。

俺を追い越して、先に教室へと入ってしまった。



違うだろって…合コンのこと?

もしくは…桃李のこと?



な、何だよ…。



何で咲哉に無言で怒られるワケ?

こういう言い方はよくないかもしれないけど、そんなの俺の勝手だろ。

誰と合コンしようが、桃李を諦めようが。




さっきの光景が、頭の中を過る。



…今の桃李には、俺がいなくたっていいんだ。

俺が一生懸命助けに行かなくても、他の誰かが桃李を助けてくれる。

俺がいなくたって…桃李の世界は変わらず廻る。



…むしろ、傷付けられた原因となった俺は、いない方が良いんじゃないか。

俺が傍にいなければ、女子連中の妬みの対象にもならない。

俺から怒られることもないのだから。



まあ…俺も、合コンに参加して他の女と会ってりゃ、少しは気が紛れるだろ。

だなんていう期待は無きにしもあらず。



俺も最低だな。ホント。

高瀬の言うとおり、女に囲まれてチャラチャラしているヤローになってしまった。




光を失い、迷子になった途端に、どんどん飲み込まれ…堕ちていく。

それはまるで、蟻地獄のように。








《終わったら、正面玄関口で待ってるぞ!》



5時限目、6時限目と。

大河原さんから、ちょくちょくLINEが来ていた。

北女の子とアポ取れたとか。

3ON3で行くとか。

大河原さんちで宅飲みするとか。

明日もフツーに学校あんのに。

随分元気だな。



帰りのホームルームも終わった。

そんな着信が来るスマホを片手に、席を立つ。