王子様とブーランジェール





《あ、そうだ。あおこさん連れてきてくれたの、夏輝?》



(…うぉっ!)



あおこ…あおこさん。って。

あの人?!

あの、学祭の時に会った超美人な人?!

小便器がピカピカだとか、かなりガチバカ臭のする、あの人か?!



ここになぜ、彼女の名前が…?

…って、ここに足を踏み入れることが出来て…とか、考えられることは、ただひとつ。



彼女は、ミスターと近い関係にあった人物?



と、いうのは…恋人?

だったって…ことか?



ま、マジか…。



胸がドキドキしてる。

予想してなかった事実の発見に。



彼女、あおこさんは、ミスターの彼女…。

…だからか。狭山らが彼女を国賓級に扱うのは。

何だか、謎が解けてきたぞ?



そうだったのか…。



じゃあ、ここに書いてあるMaitoってのが、先代のミスターの名前?

まいと…何か。どこかで聞いたことあるな。

どこだっけ…って、同じ名前の人物ぐらい、いくらでもいるか。



すると、予鈴が鳴り始めた。

やべっ。

遅刻してしまう。



慌ててカバンを背負って、その場を後にする。

その落書き…メッセージを残したまま。



予鈴が鳴り響く中、急ぎ足で廊下を渡る。

だけど、先程の興奮は治まらず。



…だって、あの人、ミスターの彼女だったんだぞ?

そんな人に会っちゃっていたんだぞ?



あのメッセージも、彼氏であるミスターと一緒に書いたものなんだろうか。

二人で肩を並べて、仲睦まじく…笑っていたんだろうな。

そんな光景を頭に浮かべる。



…彼女は。

あおこさんは…ミスターの彼女でいて、辛いことはなかったんだろうか。

ミスターの彼女なんだから、他人からの妬みつらみいっぱいあっただろ。

蜂谷さんの話では、幼なじみ同士だったっていうし。



どうだったんだろうな…。



現在の自分と重ねてみるが。

…いやいや。状況が全然違うだろ。



予鈴が鳴り終わると共に、教室に入る。

素知らぬ顔で席につくと、前の席にいる尾ノ上さんが「おはよー」とこっちを振り返る。



カバンを置いて、椅子に座ろうとした時。

ここから遠い席にいる、桃李の姿が、ふと視界に入ってしまった。

気付かれる前に、慌てて目を逸らして視界から外す。



やばい。

いつものクセで、ついつい見てしまう。

もう関わらないって言ったのは、自分なのに。

未練がましい…。