王子様とブーランジェール





「桃李の指を踏みつけたのは…誰だ?」



怒りのあまり、声が低くなってしまう。

ドスが効いていたのか、目の前にいた女子たちは体をビクッと震わせていた。

そして、お互い顔を見合せたり、こそこそとしている。

だが、いつになってもひそひそ続いていて、答えが出てこない。

その様子に更にイラッとさせられる。



「…誰だってんだよ!」



俺の更なる怒声に、キャッ!と悲鳴をあげる女子もいた。

詰め寄るように、ゆっくりと彼女たちの方へと歩み進めていく。

「桃李の指は、パンをつくる大切な指だぞ…?」

右手の震えが、治まらない。



「…それを、わざと踏みつけやがって!おまえらがしたことそのまま、俺がおまえらにやってやろうか?!」



怒声を重ねた俺の剣幕に、女子たちが泡喰って次々と弁解を始めている。



「ご、ごめんなさい!…わ、私達知らなかったの…!」

「まさか、竜堂くんがこんなに怒るだなんて…!」

「…まさか、知らなかったで済まされる話なのかよ。ケガさせてんだぞおまえら…」

上から見下ろすように睨み付けてしまう。

「ご、ごめんなさい!」

「…何で俺に謝るんだ?…違うだろ?」

「そ、その…」

目が泳いでいておろおろしている様子だが、そんなのは構わない。

…許せない。



幸せの味を作り出す、その大切な指を。

傷付けた。



もし、桃李の指が取り返しのつかないことになっていたら、どうしていたんだ?

そんな罪悪感が過って、仕方がない。



こいつらも…俺も。



許されない…!




「…指を出せ」

「えっ…」

「…同じように踏みつけてやるから、指を出せ!」

「え、ち、ちょっと…」

「…出せよ!」




上から見下ろす視界に映るのは、俺の剣幕に怯えて慌てたり後退りする女子たち。

怒りが溢れ過ぎて、震えが止まらない右手をうるさく感じて、ギリギリと拳を作って握る。

もう、何もかもが許せなくて、頭の中がごちゃごちゃで。





「…夏輝、やめて!」




すると、視界を遮るかのように、目の前に現れる。

俺のすぐ目の前に。



「だ、だだダメ!そ、そんなことしないで!」



彼女たちを背に庇うように俺の前に現れたが、その様子はいつもと同じく、どこか挙動不審だ。

いつものように、目をうるうるさせて、びくびくしている。

なのに、何で…。