王子様とブーランジェール




ねえ?とか言われても…。

この期に及んでまだ言う?

まだ取り繕うとする?

最悪だな…。終わってる。


「わ、私達…一晩愛しあった仲だもんね?ね?」


それをまだ言う?!しかも、桃李の目の前で!

最悪だ!終わってる!



「…だから!付き合ってないって言ってるじゃねえか!その話、蒸し返すな!」

「…ぎゃあぁぁっ!痛い痛い痛ぁーいーっ!」



俺が返答し終える前に、すでに山田は嵐さんの頭をがっちりと握って握っていた。

自力金剛輪、むごい…。



「ウソー!ウソウソ全部ウソー!全部美央ちゃんの激しい妄想でしたぁー。以上ー」



えへ?と笑う山田。

しかし、そんなスマイルで事態が収拾つくはずがない。



「ウソって!…え?な、何なの?!」

「だーかーらぁー。夏輝様と美央ちゃんは付き合ってないでーす。美央ちゃんが夏輝様にストーカーしてるだけー」

「…え?!だ、だって!この女がストーカーだって!」

「そこの神田は夏輝様の大切な幼なじみでぇーす。ストーカーじゃありませーん。ストーカーは美央ちゃんだよぅ?」

「だ、だって!そいつ、男をたぶらかしてるって!」

「可愛い女子に、男子は寄っていくものでーす。たぶらかされるものでぇーす!高瀬センパイが神田にちょっかい出すから、夏輝様が怒っていつもケンカしてるんだよー?」

「で、でも蜂谷さんとキスしたって!」

「それはぁー。可愛い女子のほっぺをペロンとした蜂谷さんが変態なだけでーす!」

「は、はぁっ?!」



山田によって、次々と明かされる真実に。

取り巻き女子たちは、次第に顔をしかめて表情を変えていた。

ガセネタに踊らされていたことに、気付き始めているようだ。



そして、その矛先は、お仲間である彼女へと向く。



「美央、何で?!」

「竜堂くんと付き合ってないって?…邪魔されてるって散々泣いてたよね?!」

「なのに、付き合ってない、この女もストーカーじゃないってどういうことですか?!」

「あ、それは…」

さすがの嵐さんも、女子の畳み掛けにはたじたじしている。

「何で私達がこの女をやらなければならなかったの?!竜堂くんが付きまとわれて困ってるって、美央が言ったんだよ?!」



女ってのは、窮地に立たされると、途端に開き直る。



「…は?誰もやってくれって頼んでないけど?みんなが力になってくれるって言ったから、どーぞお願いみたいな」

「ええっ?!」

嵐さん、開き直ってしまった…。