まさか。

まさか、この人が黒幕だったとは…!



「嵐…自分は手を汚さず高見の見物か?いいご身分だな?」



嵐さん、何で…?!



…と、言うまでもない。

この状況を把握した瞬間、数ヶ月前の記憶が甦る。



『竜堂くん…ひょっとして、前に言っていた好きな女の子って…あの子?』

『もしそうなら、許さない!』

『…許さないんだからね!』



学祭の前日に、桃李と鉢合わせた嵐さん。

桃李を見るなり、激昂して飛びかかろうとしていた。

何があったかは、詳細もわからないままだったが。

この件があっての今、なのかもしれない。




「…お。出てく?」



真相を突き止めなければならない。

そう思うと、勝手に体が動いてA教室から姿を現してしまった。



「…え?竜堂くん?!」



当の本人である俺が姿を現し、嵐さんは更に驚いている。

「な、何で竜堂くんまで?!」

何でも何もあるか。

放火犯じゃねえが、何でわざわざ現場に姿を現す?

確信犯だろ、これ。



「嵐さん…どういうことですか?」



俺の登場は全然頭になかったのか。

俺が口を開くとあたふたしており、混乱絶頂といったところだ。

「な、何のこと…」

終いにはすっとぼけてる?

狭山に無駄だと言われたのに…。

もう、呆れるわ。



「…何でこんなことになってるんですか!」

「…くっ!」



俺が声を張り上げると、とっさに嵐さんは俺達に背を向ける。

来た道を引き返すかのように逃げる…!




「嵐…逃がすかぁっ!…出でよ!魔神ブー!!」




狭山がそう叫ぶと、C教室のドアがガラッと開く。

「…きゃっ!」

ドアが開くと同時に、デカい壁のようなものが出現し、逃げる嵐さんの行く手を阻んだ。

嵐さんは突然現れた壁を前に、止まることが出来ずにその壁に突っ込んでしまう。

ボフッとぶち当たり、少し後ろにぶっ飛んでしまった。

「痛っ!何なの?!…きゃあっ!」

前方を確認する間もなく、嵐さんはその壁に右腕を掴み上げられる。

背中をも掴み上げられ、完全にホールドされてしまった。



「やぁーだぁー。ゴキブリ捕まえちゃったー」



そのまったりとした女子力全開の喋り方。

紛れもなく、アイツだ。



「…よし!よく捕まえたぞ魔神ブー!…褒美にカルボナーラご馳走してやる!」

「やったぁー。エリお姐様ありがとー」

「油断してそのゴキブリを離すではないぞバカめ!」

「はあぁーい」