「…と、桃李…桃李は?桃李はどこにいるんだ?!」
当の本人は、どこに行ったんだ?!
すぐに教室に出ていったから、家にでも帰ったか?!
すると、狭山は大声で笑いだす。
「…フハハハ!…ただいま、ゴキブリホイホイ作成中…?」
「…はぁっ?!」
何をふざけたことを言ってんだ?この対ゴキブリ召喚士!
こんな時に、魔王の笑いなんぞ浮かべて…!
桃李の身を案じて焦っているにも関わらず。
意味不明なことを言って魔王の笑いを吐き出す狭山にいい加減イライラし始めていた。
ちょうど、その時だった。
コンコン、と家庭科室のドアがノックされる。
返答する間もなく、ガラッと気持ち静かにドアが開いた。
「…狭山さん?」
ドアからひょっこりと顔を出す。
それは知っているクラスメイトの顔だった。
キョロキョロと辺りを見回したのち、中に身を進めてドアを閉める。
「おう、真奈か」
「き、菊地さん?」
家庭科室に現れたのは、クラスメイトの菊地さん。
桃李の友達だ。
緊張感を持った強張った顔で、しずしずとこっちにやってくる。
「狭山さん、B教室と美咲から連絡がありました。ターゲットも動き出しそうです」
菊地さんがそう口にすると、狭山は「おお…!」と嬉しそうな顔をする。
「こんなに早く、チャンスが訪れるとは…おまえら仕事が早いぞバカめ!」
「狭山さん、早く行きましょう!早くしないと桃李が…!」
「早く行くに決まってるだろうがバカめ!…そうとなれば行くぞ!おまえら!」
狭山の合図で、菜月はパソコンを一旦閉じ、小脇に抱える。
藤ノ宮も狭山の後に続いていた。
…え?何なに?
桃李が…?!
すると、後ろから背中をバシッと叩かれる。
痛っ!…と、振り向くと、そこには理人がいた。
「何ボーッとつっ立ってんの?早く行くよ」
この…!
これからどこへ行くのか。
そこには恐らく…桃李がいる。
そして、奴等と対峙すると思われる。
桃李に危害を加えている連中と。
…ふざけんなよ。
何のでっち上げなのか、言いがかりなのかは知らないが。
桃李に危害を加えるとは…!
…だけど。
『何であんたの幼なじみってだけで、桃李がイジメのターゲットになるのよ!…あんた、何やってたのよ!』
『こんなカタチでも傷付けるだなんて、あんまりじゃない!』
この騒動は、俺が原因…。
(くそっ…)



