そのゴリラのその口から、桃李の名前が出てきた途端にカッとなってしまう。
おまえが…おまえがその名前を口にするな!
「相変わらずゴリラゴリラで攻めてくるなぁ?!おい!…神田さんどこにいる?!さっき、『試合見に来て下さい!』って、誘ったんだ!」
試合見に来て下さい?…このっ!
俺が言い出せずに泣き寝入りしたセリフを…こいつはいとも簡単に!
俺の知らないところで何を!
許されないわ!
「…あぁ?まだ桃李のこと諦めてなかったのか?負けたゴリラの分際で!探すな!」
「あんなケンカ試合で諦められるワケないだろう!俺は本気なんだ!夏休みは神田さんがフランスに行っていてデート出来なかったが…2学期こそはデートしてみせる!」
高瀬にドンと肩をどつかれた。
このっ…!
「2学期になってからもう1ヶ月経ってるぞ!フランス行ってようがいまいが、桃李はおまえとデートなんてしねえんだよ!俺の見てないところで桃李と喋るな!見るな!近付くな!ゴリラがうつるだろうかぁぁっ!」
今度はこっちから倍返しでどつき返す。
すると、下から覗き込まれて睨み付けられる。
ゴリラのメンチ、キモい。
「喋るな?見るな?近付くな?…竜堂、おまえに神田さんの何の権限があるんだ!神田さんに確認したぞ?彼氏はいないって!この俺にもチャンスはあるんだあぁぁ!」
何っ!桃李に…そんなことも聞いてんのか?!
余計に喋ってんじゃねえよ!桃李とは一言も喋るな!
「…それがどうした!おまえにチャンス?…ゴリラに人間と付き合えるチャンスがあるワケないだろうがあぁぁ!チャンス崩壊だこのゴリラあぁぁっ!」
「ゴリラゴリラうるさいな!チャラ男があぁぁっ!」
「チャラ男チャラ男うるっせえぞ!ゴリラあぁぁっ!」
どつき合いは次第にエスカレートし、終いにはお互いのTシャツを掴み上げ、取っ組みあいとなる。
「…は?!夏輝、何やってんだよ!」
「高瀬!試合前からケンカするな!」
だいぶ騒ぎになってしまい、互いのチームのメンバーが慌てて仲裁に入ってきた。
しかし、そんなことされても、目の前にこのクソゴリラがいる限り怒りは止められない。
「ゴリラのくせに、サッカーしないで隅っこでバナナ食ってろや!コラあぁぁっ!」
「女好きのチャラ男が!あの女子のギャラリーの中に本能のままダイブしてこいやあぁぁっ!」
「…夏輝!やめ!やめい!こんなとこでデスマッチの続きを始めるな!」
「高瀬もやめろ!…審判!こいつらにレッドカード出せ!」
試合も始まってないのに、レッドカードなんか出るかコラあぁぁっ!



