「あ、そうだ」
教室に到着し、食器の入ったバカでかい袋の置き場所を、教室の後ろで理人と考えていた時。
桃李が自分のカバンを置いてから、俺達のところにやってくる。
「どうした?」
「桃李、荷物ここに置いとくからな。帰り忘れるなよ」
桃李の手には、パンダフルの紙袋が2つ。
それを俺達に差し出す。
「はい。今日のお礼。二人ともありがと」
中身は、言わなくてもわかっている。
紙袋から伝わるじわりとした温かみ。
まだほんのりと残っている焼きたての香り。
中を開けると、やっぱり。
クロワッサンだ…!
しかもたくさん!
「多めに焼いたの。一緒に来てくれたお礼」
「や、やった…!」
好きなものとのご対面で、嬉しさのあまり、素直な感想が出て、顔が緩んでしまった。
丁度食べたいと思っていたんだよ。
アップルパイもいいけど、やっぱり俺にはこの鉄板が良いのであって。
マジ嬉しい…!
「お腹すいたら食べてね?」
そう言って、桃李は自分の席に戻っていった。
袋開けたついでに、紙袋を深く覗く。
クロワッサンが5個。
焼きたてバターの香りがまだ残っていた。
あぁー。良い香りだ。
「…夏輝、また紙袋に顔突っ込んでんの?パンダフルのパン買ったら毎回毎回」
「充電してんだよ…」
こんないい香りなのに、充電せずにいられるか。
お、そうだ。充電もいいけど。
まだ温かみあるうちに、ひとつ食べてしまわねば。
そのまま自分の席に腰掛け、クロワッサンを一口噛る。
…あぁー。うまい。
この世は天国だ。
「随分と幸せそうに笑ってくれるな?」
理人も、俺の後ろにある自分の席の椅子に座って、同じく桃李から貰ったクロワッサンを食べている。
「…幸せの味、だろ?」
理人の手に持ってる食べ掛けのクロワッサンを指差して、感想を求めた。
「おめでたいやつだねー?」
「んだと、コラ!」
「でも桃李の作ったパンは美味しいと、俺も思う」
「…なんかムカつく」
理人に言われると、余計にムキになってしまう。
やっぱりおまえ、桃李に惚れてるだろ。
だなんて、勘繰ってしまうのだ。
でも、ぶっちゃけ。
理人が相手なら…敵わない。
そんな不安がすごく強く、ついついいつも確認してしまうのだ。
「…おまえ、やっぱり桃李のこと…」
「一時間のうちに三回も同じ事聞くとか、あるか?!」
また、呆れられてしまった…。



