「あれー?夏輝、声出てねんじゃね?」
「おいおい!ヤル気あんのかミスター!」
「今、同点のチャンスだぞ?声出して応援してやれや!ミスター!」
隣にいる咲哉や、前にいる先輩方からダメ出しを受ける。
口を開けばミスターミスターと…!
でも、今の俺、それどころではない…。
《夏輝がおでこにキスしてくるから悪いんでしょ!》
《ばか!ばか!》
頭の中、そればかり…。
ボーッと漠然と試合の様子を見てると、わぁーっ!とスタンドに歓声が響いた。
4番の汐見、センター前ヒット打った。
ランナー、二塁三塁だ。
うちの高校が一点を追う展開。
ツーアウト。逆転のランナー出た。
強豪校相手に、まさかの展開だ。
…俺の方だって、まさかの展開だっつーの。
「…夏輝!陣太だ!陣太出てきたぞ!」
『5番、キャッチャー、横川くん』
アナウンスと共に、陣太がバッターボックスにやってくる。
この逆転チャンスの場面に、更なる歓声が沸き上がる。
「チャンステーマ、チキチキバンバンいきまーす!」
野球部の応援団要員が、下で俺達に応援の指示を出している。
だが、それどころではない…。
チキチキバンバンでも勝手にバンバンこいや。
そんな野球部員をボーッと見ていると、少し離れたところに桃李の姿が。
黒沢さんと並んで立って、メガホンを叩いて歌って応援している。
こんな大群衆の中、見つけてしまった。
俺の執念、半端ない。
歌ってる顔、かわいいな…。
一生懸命で…。
テンポの早い騒がしいチキチキバンバンがBGMだが、その一生懸命歌っている姿を遠くからまったりと見守ってしまった。
…もう、止められないんだって。
おまえのことが、好き過ぎて。
周りの応援の大声も、何のその。
そのことばかりを、ボーッと考えてしまう。
…もう、抑えられない。
『打ーてー打ーてー横川ー!』
『打ってー打ってー横川ー!』
『今がチャンスだ横川ー!』
…ホント。
今がチャンスだ…!
baKed.7 eNd
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