王子様とブーランジェール





確かに、女子たちのフル稼働の働きっぷりに、俺達の出る幕はなさそうだ。

狭山の会社の男衆もいて大丈夫そうだし、野郎どもは帰ることにした。

「また明日ねーん!」と、松嶋は謹次のバイクのケツに跨がり、他の二人と一緒に帰っていった。

それを見送ってから、俺と理人も帰路につく。






「みんな本気すぎてワロタ。楽しかった」



開口一番、理人のセリフはそれか。

確かに。本気すぎるな。

網を仕掛けるとか、クレーン車仕込むとか。

作戦の計画性、半端ない。

何かの組織として活動できる。

テロ対策ユニットとか…。




だが、襲撃事件の犯人連中をやっつけた。

黒幕の腹をぶち抜いてやったぞ。

もう、これでうちの男子生徒があいつらに襲撃されることはない。



何だか、すっきりした。



暴力に訴えるとか、良くないとは思うけどさ。

でも、やってやった…!



社会的抹殺もされたことだし、恐らくこれからは大人しくしているに違いない…かな。

ボコボコにリンチされた動画とか、裸体の写真とか、ナーバスじゃないだけまだいいだろ。

馬鹿殿様に変貌を遂げた写真だぞ。

後で笑い話になる…と思う。

理人の学祭での女装レベルだろ。




「もう12時になるぞ?夏輝、家大丈夫なの?うちは母さん今日は夜勤だから良いけど」

「理人んちで遊んでることになってる。だから大丈夫」




今、暗闇の西出口を二人で歩いているが、商店街の方も当たり前に真っ暗だ。

もう、街灯しか点いていない。



道を抜けて通りに出る。

出るとすぐ目に入るのは、通り沿いのパンダフルだった。

もちろんパンダフルも電気が点いてない。

2階の桃李の部屋も、電気が消えている。

桃李も寝たか。




(………)




桃李の部屋の窓をボーッと見つめる。



桃李。俺、今回もボコボコにされてねえからな。

傷付いてないし、痛い思いもしてない。



大丈夫なんだって。

俺、そんなにヤワじゃねえよ。




(…ん?)




ふと、視線を下ろす。

すると、そこには。




「…えっ」




まさか。そんな。

何で…?




店の前の石段に腰掛けて。

膝を抱えて、体育座りをしている。

眼鏡を掛けているその顔は俯いていて…。




「桃李…」




何で、こんな時間に。

そこに座ってんだよ…。