なんだありゃ。
先代ミスターを追いかけて行ってしまった藤ノ宮の姿はもう見えない。
行ってしまったその方向を唖然と見ていると、後ろでは美梨也が「えへへ…」と笑い出した。
「ミスター…見に来てくれてたんだぁー…」
一人で笑い続けている。
ニヤニヤとうっとりしながら。
「えへへ…」なんて。
「お元気そうだったかい?私達の主は」
「いや…ただ後ろ姿見ただけで、ミスターとは話してない」
「へぇー。…でもいいや。ミスターが来てくれてたってだけで。えへへ…」
そう言って、まだ笑い続けている。
うっとりと、夢心地のような。
「…私達のこと、いつも見守ってくれてるんだぁ…」
本当か?
おまえらとは違って、いつもいつも四六時中考えてるワケはないだろ。
でも…これが、こいつらの心を奮い立たせる活力源なのかもしれない。
消えてしまった藤ノ宮は放っておいて。
怪しく笑い続けている美梨也と二人で正面玄関口へとゆっくり歩いて向かう。
しかし、近付いてみると、正面玄関口には人だかりが出来ていた。
あれ。
グラウンドでの大乱闘はだいたい終わったのだろうか。
みんな、こっちの方に流れてきたのか?
「何だあの人だかりは。何やってんだ」
さりげなく口にしたセリフだったが、美梨也からの返答は恐ろしく意外なものだった。
「…ああ、今ね、トドメを刺している最中」
…トドメ?
「トドメ?」
「うん。社会的抹殺している最中」
社会的抹殺?!
更に近付いて見てみると、その全貌が明らかとなる。
人だかりの中を覗き込むと。
地にぶっ倒れている野郎に跨がって中腰でいるのは…まゆマネ?
手には絵筆とパレットだ。
絵筆を使って、何かに色を塗っている?
そして、顔を上げた。
「よーし!完成ー!まゆりの久々の大作だよー!」
そして、まゆマネがそこから退いたその先にあるものは…ただ、ただ絶句するしかないものだった。
な、何だこれは!
そこに倒れているのは、先ほど俺が腸をぶち抜いた、マシュー総長だった。
意識…あるの?
だが、その跡形、面影はほぼ無くなっている。
顔は白塗りにされ。
真っ黒の極太な眉毛。
両頬には、赤の真ん丸…チーク?
そして、ほうれい線や目元の小じわやらが太い黒線で強調されている。
なぜか、歯が真っ黒に塗られていた。お歯黒?



