…だけど、あの時の俺は、わからなかった。
『間違ってる』と言えば、反逆者として制裁を受け。
だけど、自分の考えを殺して『正しいです』とも言えない。
間を取ってアウフヘーベン、だなんてのも無理で。
まだまだ子供だったよ。
本当、意気がっていた。
それに、この世の中、何が正しくて何が間違っているのかなんて、わからない。
先生も困っただろうな?
でも俺は、今でもわからない。
何が正しかったのか、何が間違っていたのか。
今でも、頭ん中、ぐるぐると回ってる。
「わ…わわわわ!」
「…ふざけんなよ!」
肘をひいて、右手で作ったその拳を加藤の左頬に炸裂させる。
「うっ…!」
加藤は、うめき声を漏らしていた。
…でも、これだけは言える。
やっぱり、先生、間違ってるよ。
自己満足のために、自分を守るために、人を傷付けるのは、やっぱり、それは間違ってると思う。
あの時、みんな傷ついたんだ。
桃李も、相馬も、俺も。
「…おまえら、許されないわ!」
今までこさえてきた怒りを、叫びと共に渾身の左膝の蹴りを加藤の腹に叩きつけるように入れる。
ドゴッ!と鈍い音がした。
許せないことは、許せない。
これからも、それをはっきり言える、人間でありたい。
そんな強さも、持ちたい。
「うぐっ…」
加藤から手を離すと、崩れるようにずるずると倒れ込む。
パタッとうつ伏せに倒れてしまった。
そのまま動かない。
落ちてしまった…。
ふう、と長い息を吐く。
とりあえず、やった。
マシュー総長と幹部。やったわ…。
(………)
とりあえず、戻るか…。
倒れている加藤を横目に、正面玄関口の方へ戻ろうとした。
その時だった。
「お見事だね、夏輝」
呑気な話し声と共に、パチパチと拍手の音がする。
聞きなれた声であり、慌てて振り返る。
なぜここに…!
「に…兄ちゃん!」
「おつかれー」
西出口の外壁代わりとして植えてある、木々の間から。
ひょっこりと顔を出して、俺に手を振っている。
残党の名誉顧問。
…もとい、川越酒店の兄ちゃん。
「な、な、何でいるの…」
思わぬゲストにビックリしてしまい、ドキドキしてしまう。
酒屋の兄ちゃんは、涼しげに笑っていた。
「あはは。バイク品評会とレクリエーションの見学。…って何?二村が考えたんだって?」
「あ…うん」
「二村が協力してくれたって?アイツもなかなかやるね。昔、威嚇したこと謝ろうかな」
威嚇?何してんの?どんな恐ろしいことした?



