王子様とブーランジェール





言葉にならないうめき声をあげながら、後ろに少しずつ吹っ飛んでいる。

…まだ、終わりじゃない。

突き飛ばすように拳を離してやる。



体を捻って反動をつけて、足を踏み変え、マシュー総長の腹に右足の裏を勢いよくぶち込んでやる。

鈍い音と共に、マシュー総長は更に後方へぶっ飛んでいった。

そのうち地面を擦って体ごと滑り込んでいく。

仰向けになったまま、動かなくなった。




…腹をぶち抜いてやったぞ。




「すごい迫力だバカめ…」

「華麗なるスピニングバックキック…」




狭山と松嶋がポカーンとしている一方。

背中の方からは「お素敵!」「さすが私達の夏輝様!」と、拍手喝采が耳に入る。

やめろ。微妙だ。




だが、まだまだこれで終わりじゃない。




ふと見ると、総長の取り巻きが5人。

ボコボコで倒れたまま動かない、自分たちのボスを横目にフリーズしている。

「真秀が何もできずにやられた…」

「こ、こんなに強いなんて聞いてねえぞ…」

口々に呟き始めている。




「…おまえらも、逃がさねえよ?」



奴らに向かってそう呟くと、途端に体を震わせている。

そして、次々と弁解を口にし出す。



「ま、待て!も、もう俺達の負けだ!」

「もういいだろう!撤収する!」



…は?負け?撤収?



「…別にチーム戦やってんじゃねえんだよ。俺はこのくだらねえ襲撃事件に参加した奴ら全員殺すつもりだ」

「は、は?!」

「おまえらが総長に持ち掛けたんだろ?このくだらねえ作戦。最後に俺一人を全員でボコるってよ?」

「えっ…!」

全員、驚愕の表情だ。

知らなかったとでも思っていたんだろう。



「…逃げんなよ?」



奴らの方に一歩、二歩進めると後ろの方にいるヤツが後退りしている。

逃げようとしてるそいつ…幹部の加藤だな?

この襲撃を考案し、指揮を取ったという。

さっきから隅っこにこそこそ隠れているのが気になっていた。

俺の後ろには、すでに松嶋と狭山がそれぞれ獲物を構えて臨戦態勢だ。



「…ちっ!」



そして、加藤はこっちに背を向けて単身その場を飛び出した。




「…逃がすかぁーっ!」



俺も飛び出し、奴らを掻き分けて加藤を追うべくダッシュする。




「クックッ…竜堂、こっちは任せろ!…松嶋!」

「りょーかい?」