王子様とブーランジェール




「…そういうワケで。瞳さんは来週付けでこの星天高校に編入することになりましたから。イジメを理由として。そこは悪しからず?」

「え…?」

「…え?イジメでしょう?高校編入ぐらい、お父様に頼めばちょろいものですわ?」

「ちょろいって…」

「…あ、ついでに瞳さんは金髪もカラコンもお止めになりました。全然別人になりましたので、恐らく道ですれ違ってもわからないと思いますわ?…以上!」



以上!の言葉を最後に、辺りはシーンと静まってしまった。



絶句だ。全員、絶句。

小笠原の一方的な口撃と、行動力に。

…って、学校編入?そこまでやる?できちゃうの?

来週から、あの姫がこの高校の生徒になるの?




絶句…。




しかし、ずっと静まっているワケにはいかない。

…この男は。




「…おい…コラ」




そこには、カタカタと震えており。

怒りではち切れんばかりのマシュー総長が…。




「さっきから黙って聞いていれば言いたいことばっか言いやがって!…余計なことしてくれてんじゃねえぞ!」



一層の大声を張り上げながら、小笠原の方へと喰ってかかろうとする。

「真秀!」

取り巻きの不良どもが制止するも、それを振り払ってまでもずかずかと小笠原の方へと足を向けていた。

対する小笠原は、そんなマシュー総長の激怒っぷりにビビることもなく、しれっとしている。

しまいには、鼻で笑っていた。



「あーら。真実を話したまでですよ?相違点があるならお話ししてください?」

「…何だとこのアマァァッ!!」

「尼ではありません?お嬢様です?」




今の一言で、マシュー総長の頭から噴火音が聞こえたような気がする。

顔はもう般若のようだ。

もう、怒り狂って怒り狂って何をするかわからない、そんな雰囲気。

小笠原を上から見下ろして、ドスの聞いた声で怒鳴る。



「…ふざけたことぬかすと、殺んぞコラァ!」



マシュー総長の背中を追う。

その背中、服を掴み上げて動きを制止させる。

後ろに引っ張ると、体をガクンと揺らしていた。

「あぁ?!」と、ものすごい形相で後ろを振り返るが。

俺と目が合うと、一瞬ビクッと怯んでいた。




「…待て。おまえの相手は俺だろうが」

「竜堂…!」



女相手に殺んぞ?とか、どうかしてるんじゃねえのか。

その『支配欲』だかに蝕まれると、そんな分別もつかなくなるのか?