息を整えて、正面玄関口のガラス戸をカラカラと開ける。
外で騒いでいたヤンキーたちは、一気にこっちに注目した。
途端にお祭り状態になる。
「…おまえがミスターかコラァ!」
「何してくれてんだ調子に乗ってんじゃねえぞオラアァァ!」
「殺すぞクソがあぁぁっ!!」
罵声の嵐だ。
ギャーギャーギャーギャー…。
どいつも目玉ひんむいて、こっちに敵対心剥き出しである。
ちなみに語尾にコラァ!やオラアァァ!は口癖ですか?
俺が背にしているガラス戸の鍵を、理人がカシャンとかける。
それを確認してから、奴らの待つ方へと身を進めた。
…先程発表された、苦笑いしか出ない作戦を今一度頭の中で整理する。
《…まずは、竜堂。敢えておまえが奴らの前に姿を見せる》
立ち止まって、お集まり頂いた早瀬高校、バヤセの連中を見渡す。
みんながみんな、俺をぎっちりと睨み付けてる。
「姫に手を出しやがって!どういうことかわかってんのかオラァ!」
「仲間をどこにやった!監禁してタダで済まされると思うなよおまえぇぇっ!」
「殺すぞ上等だコラァ!」
「あんな可愛い犬の画像送りやがってぇぇっ!バカにしてんのかあぁぁっ!」
あ、うちのクソ犬の写真見たの?
ホントにバカにしてると思う。すまんな。
《…ブッ殺してやりたい気持ちになるだろうが、そこは堪えろよ?本戦勃発、無用な会話は避けろ》
…あぁ。ブッ殺してやりたい気持ちになるな。
こいつらが、俺を挑発するために何の関係もない男子生徒に手を出したと思うと、膓煮えくり返る。
飛び込んで行ってバタバタぶん殴ってやりたいが、ここは冷静になれ。
冷静さを欠くなんざ、話にもならない。
奴らを目の前に一層の罵声を浴び続け、それでも無言で立ちはだかる。
すると、連中の群衆の中から一人。
こっちに近寄って来て、メンチを切りながら俺の顔を覗き込んでくる。
「よぉ?イケメンさんよぉ?さっきから黙って立ってるけど…おまえには口がないのかぁーっ!」
耳元で叫ぶなうるせえ。
しかも、息タバコ臭い。
でも『口がないのかぁーっ!』がツボに入りそうになった。
んなワケあるか。見てみろや。口あるぜ?
笑いたいけど我慢我慢。
しかし、それでも返答なくシカトを通す俺に、相手はイライラし始める。
「…仲間と姫をどこにやったんだあぁっ!!タダで済むと思うなよボケがコラァァっ!」



