王子様とブーランジェール





単車を乗り付けてきたヤツもいるのか、あちこちでヘッドライトの光が画面に差し込んでいる。

「80弱ってとこかなー」

「そ、そんなに?!」

「だって、姫と仲間を囚えられてるんだよ?みんなお怒りだよきっと」

そうか…そうだよな。




「…お。伊藤さんも完了。全員揃いました」

すると、理人は自分のスマホで通話を始める。

「…尾ノ上スタンバイ。エンジンかけろ…え?鍵回すんだよ、鍵」

話の相手は尾ノ上さんか。

…先程の作戦会議で初に耳にしたが、この苦笑いしか出ない作戦の鍵は、彼女が握っていると言っても過言ではない。

本当に御愁傷様だ。

可哀想に。




「…定刻より早いですが、そろそろ始めますか?」



菜月は俺に問いかける。



「当たり前だ。さっさと奴らを潰す」

「…了解。我が軍の殿様?」



そして、菜月はスマホで通話を始めた。

画面を見ている。グループ電話らしい。



「少し早いですがミッションスタート致します。現場報告は和田から」



席を立った理人にスマホを手渡す。

「りょーかい」と言い、理人は俺に目で合図をした。

頷いて応じて、一緒に生徒会室を出る。



暗い廊下を無言で二人で歩く。

ガラーンとして静かだから、余計に緊張感が増していた。



生徒会室から歩いてすぐの正面玄関口前は、大勢の人の気配がして騒がしくなっている。

ガラの悪い怒声も聞こえるな。

誰か『ミスターコラァ!出てこいや!』って、叫んでるわ。

単車のヘッドライトが飛び交うように辺りを照らしており、その光がガラス戸から差し込んで明るくなっている。




「ミスター!出てこいやコラァ!」

「姫をどこやったんだコラァ!」




玄関のガラス越しに、理人と並んでその光景を無言で見守る。

こりゃ相当、派手にお怒りの様子だ。




「…ミスター」

「あぁ?」

理人が改まったように、その呼び方で俺を呼ぶ。

その呼び方はちょっとイラッとくるな。



しかし、理人は左の拳を俺に突き付ける。



「…ミスター。健闘を祈る」

「………」



はいはい。わかったよ。

と、思いながらも、その拳に自分の拳を突き合わせた。



そして、理人をその場に残し。

ご丁寧に靴を履き替えて、奴らの待つ表へと赴く。




作戦のスタートは、まず俺が。

敢えて、奴らの下へと飛び込む。