王子様とブーランジェール






…というぐらいの話しか、心当たりがない。

そんな、不良とケンカだなんて。

だけど、あの程度の騒ぎでそんなに名前が通り噂ななるのだろうか。

俺、他に何かやったかな…?




…しかし、あれはしょっぱい出来事だった。



夏輝は心菜ちゃんのカレシ…って、桃李に言われることがこれほどダメージになるとは思いもよらなかった。

こんなにショックだったことはない。

あれからというもの俺は、もうこの拗れて仕方ない状況に陥るのが嫌で、彼女を作るのはやめた。

まあ…桃李が好きなのに、他の女子と付き合うとかしてる俺も、頭がイカれていたんだと思うけど…。



…いや、それだけじゃなくて。



『夏輝助けてえぇっ!』



…例え、付き合ってる彼女が絡んでいたこととはいえ。

やっぱ、嬉しかったんだ。

真っ先に俺のところに助けを求めてくれたことが。

頼られてる。

そんな事が、単純に嬉しかった。




もう、真っ直ぐ好きでいたい。

余計なこと、考えたくない。

おまえの中で、一番に頼られる男でありたい。

そう、思ったんだ。





『もう、痛い思いとか…傷つかないで…』





…桃李に、そう思わせてしまうなんて。

つくづくまだまだだと、思う。




あの時、カッコ悪いとこ見せたかもしれないけど。

あれから、俺は考えた。



頼られる男でありたいから。



例え痛くても、簡単に痛いとは言わない。

痛かろうが、生気振り絞って我慢する。

おまえの前では、絶対に倒れない。負けない。

もう、カッコ悪いとこ、見せない。




心の痛みも、何てことはない。

死ぬこと以外は、擦り傷だから。



自分の守りたいものは、自分の手で守れるように。

強く、ある。








「…よし、おまえら!全員揃ってるか!」



まるで先生のように、狭山が教卓にいる。

これから最終打ち合わせともいえる作戦会議を始めるようだ。

呼び掛けられたその場にいる女子たちは、静かになり、教卓の周りに集まる。




「…これから作戦の発表と打ち合わせをするからな?全員耳の穴かっぽじってよく聞け。いいな?」

『はい!』




いよいよ、始まる。

クソ不良どもを討伐する時間が。

俺も一緒になって、耳の穴かっぽじってよく聞いた。




しかし。




「え…」



その作戦には、苦笑いしか出てこない。



「…ま、マジか!」