王子様とブーランジェール




『…おまえらこのやろおぉぉぉっ!!』


叫び散らしながら、奴らのもとへ更に猛ダッシュをかける。

『…あぁ?』

『何だ?…あ、あぁっ!おいっ!』

叫び声で奴らは俺の存在に気付いた。

だが、しかし。その時点ではもう遅い。

俺の足はすでに踏み切っており、桃李を捕まえている男に向かって飛び上がっていた。

勢いそのまま、足の裏をヤツの顔にばっこりと踏みつけるように炸裂させる。

衝撃で桃李から手を離し、俺の着地と共に地に倒れ込んでいった。

『ひ、ひ、ひいぃぃっ!』

桃李はその場にへたへたと座り込んでいる。

しかし、それだけで終わらず。

眼鏡…眼鏡どこだ!

桃李の眼鏡えぇっ!

慌てて探す。

…眼鏡はそこら辺に寂しく転がっていた。

慌てて拾い上げ、直ぐ様桃李の顔に眼鏡をかけてやる。

すると『…あ、見えた』と、戻ってきた眼鏡を手で触って確認していた。




それからも、俺の怒りは治まらず。

心菜を囲んでいた輩をも拳やら蹴りやらで一掃する。

そこら辺のちょっとケンカをしたことある程度のヤンキーなんか、俺の敵じゃない。

バッタバタと薙ぎ倒していく。

『な、何だこいつ…』

『危ねえ…狂犬みてえだ!』

『やべえぞこいつ!』

一方的な乱闘を続けていると、奴らはボロボロになりながらも、そのうち逃げて行ってしまった。



「桃李…」

大丈夫か?!

と、駆け寄ろうとしたが。




「夏輝ぃーっ!恐かったぁーっ!」



行く手を阻むかのように、心菜が俺の胸に飛び込んで抱きついてきた。

「夏輝が助けに来てくれて嬉しいーっ!もう、大好き!」

「わ、わかった!…わかったから!」

わかったから…離れろ!

桃李の前なんだってぇーっ!

桃李の前で、心菜に抱き着かれていることに、ザワザワし始めた。

その桃李は、座り込んだまま、きょとんとしてこっちを見ている。

ち、違う!桃李、違うんだ!…いや、違わないんだけど。

…あーっ!拗れてる!めんどくせー!



「桃李もありがとね?夏輝を電話で呼んでくれて」


俺に抱き着いたまま、心菜は桃李に話し掛けている。

桃李は心菜の言葉にウンウンと頷いていた。



「うん!だって、夏輝は心菜ちゃんのカレシだもん!」



な、何っ!



…この桃李のセリフは、俺に多大なるダメージを与えた。

ここ数年にないクリティカルヒットだ。



夏輝は心菜ちゃんのカレシだもん。



…このセリフのおかげで、俺はしばらく立ち直れず。

この二日後には、心菜と別れてしまったのである…。