王子様とブーランジェール




俺としては、心菜が他の男と遊んでいようが浮気してようが別にそんなのどうでもいい。

しかし、嫌がってるとか無理矢理とかならそれを放置しておくワケにもいかないな。

桃李が助けてって俺に言ってきたんだし…。



『…わかった。今そっち行く。どこらへんだ?』

『あ、あの、なな夏輝んちのすぐ近く……ひいぃぃっ!』



話の途中で突然、桃李のお決まりの汚い悲鳴が響いた。

『…ど、どうした?! 』

すると、電話の向こうで声が聞こえる。

『…どこに電話してんだこの眼鏡ブス!』

『や、やめ!やめやめ!…ああぁっ!』

そして、ガシャン!と物音が聞こえた。

『桃李!…おい!おい!』

桃李の身に何かが…!

これは、黙ってはいられない!

今すぐ現場急行せねば!

スマホを耳に当てたまま、席を立ち、玄関へと急ぐ。

『桃李!おい!返事しろ!』

『ああぁっ!夏輝!…眼鏡!眼鏡ないぃーっ!何も見えないよぉーっ!』

…何っ!

突き飛ばされたかして、眼鏡が吹っ飛んだのか?!

眼鏡が外れたのか!

た、大変だ!



これは…!



…クソ野郎ども。

許されないぞ?

心菜はともかく、桃李のことを眼鏡ブスって言ったな…?

その上、突き飛ばして桃李から眼鏡を取り上げるとは…!




許されないわ!腹立たしい!

どこの誰だか知らんが…ブッ殺してやる!!





そこからは早い。

桃李の言っていた『夏輝んちのすぐ』だけを頼りに猛ダッシュで現場を探す。

だが、現場は本当に近く、パンダフルと俺んちの中間あたりの場所だった。

そこには、派手目のチャラついた格好をした明らかに不良です!みたいな連中が5人。

全員で心菜の手を引っ張って囲んでいる。



…いや、一人だけ桃李に絡んでいる!



『…ちょっ!おい!…この女、眼鏡外したらめっちゃロリ顔で可愛いぞ!…俺、こっちにするわ!』

『しぎゃあぁぁっ!眼鏡!眼鏡えぇっ!何も見えないぃぃっ!夏輝助けてえぇーっ!』



桃李の体を小脇に抱え、連れて行こうとしている…!

その男に抱えられた桃李は、腕の中でバタバタと力弱く暴れていた。



そいつは、おまえみたいなクズヤローが触っていい代物ではない…!

眼鏡まで外しやがって…A級戦犯だおまえは!

許されないわ!



その光景を目にしたら、一気に怒りが膨れ上がる。

つい、我を忘れてしまった。



…ブッ殺す!!