王子様とブーランジェール




パンツ星人に対し、狭山は苦笑いを見せている。

「おいおい…パンツを見せろと言うが、パンツ見ただけで何の得があるというんだバカめ!」

「えーっ!お姉さんのパンツなら三日三晩は余裕でイケますよ!寝る前に…」

その続きは際どいから文章化しないでほしい。



すると、狭山は笑いだした。

大声で、魔王のような豪快な笑いだ。



「ははは!…まあ、良い。紋中ヤンキーども。パンツ見るよりもっと面白いイベントに参加していけ?ケンカっていうイベントになぁ?あぁ?」



そう言って、笑いながら教卓の方へと去っていった。

ヤンキー三人どもは、顔を見合わせて悪そうに笑う。

「あの姐さん、話わかるじゃん。なぁ?」

赤髪の重徳は、松嶋に向かってピースしている。

「パンツ、絶対ピンクだ…」

パンツ星人・厚雅、もう変態でしかない。



やれやれ。



「やれやれ…」

同じことを考え、呟いたヤツがいた。

俺の横にいる松嶋だ。

パンツ星人といい、このメンバーに苦労してんのか?

…ぶっちゃけ、俺にとっちゃ、教室でのおまえもそんなに変わらない。

類は友を呼ぶんだな。




「星天中、竜堂…」



突然、名前を呟かれてビクッとさせられる。

目の前には、苦労するメンバーの一人、頷いてばかりの黒髪男、謹次が立っていた。

目線の高さが同じくらい。身長は向こうがちょっと低いか。

な、何だよ。

さっき早とちりで軽くやり合ってしまったから、ちょっと気まずいのに、そっちから呟きで話し掛けてくるとは。



「…尋常じゃない強さの狂犬だから、近付かない方が良いって噂だって…リョータ先輩が言ってた」

は?

狂犬?リョータ先輩?何?

横では、松嶋もその話を聞いていたのか「へぇー。リョータ先輩が?」と、口にしている。

「夏輝、ヤンキーとケンカしたことあんの?」

「…は?」

「噂になってるってことは、どっかの連中とやり合ったことあるんだろ」

「………」



そんなワケあるかと記憶を辿るが…あ。あった。







昨年、雪降る前の話だ。



クラブチームも引退し、キックボクシングの大会も終えて、ようやく受験生らしく勉強に勤しむようになった頃。

学校が終わって、真っ直ぐ帰宅すると、家に着いた途端、その時付き合っていた彼女から『今から家に行くねー』とLINEが来た。

…は?何を勝手に!

今日は、桃李が秋緒のところに勉強も兼ねて遊びに来る。

だから、今日は誰とも会わず、家にいようと思ったのに…!