王子様とブーランジェール





俺と同じくして、その書類に目を通した狭山はとたんに腹を抱えて笑い出した。

「あははは!何だこれはおまえ!…二村?随分ヤル気じゃねえか?あぁ?ようやく私達に協力する気になったか!バカめ!」

喜んで手を叩いて笑う狭山だが、二村さんはその様子を表情崩さずに見ている。

「何を言ってるんだ。おまえらに協力するんじゃない。ミスター自身に協力するんだ。何もおまえら極道集団と和解するわけじゃない。おまえらのおかげで先代がどれだけ迷惑被っていたか」

「…あぁ?まだ言うか!このメガネヤロー!先代を盾にして私達にケンカを売ったくせに!あぁ?」

「だが、今は利害一致するから協力体制としよう。この事件をこのまま放っておけば、ミスター自身を傷つけられかねない」

そう言って、二村さんは俺の方を見る。



「…ここで、ミスターを守ることが出来なければ、あの人に顔向けが出来ない…」



…なぜ、この人たちは。

こんなにも俺を守ろうとしてくれるのか。




この人たちを、こんなにも奮い立たす。

先代ミスターって、どんな人なんだ…?




「…あの御方を『あの人』と呼ぶなぁーっ!このメガネポンチが!はぁ?何ですか?距離が近いアピールですか?あぁ?…この下心丸出しクソヤローがぁっ!バカめ!」




さ、狭山?何だ?

急に爆発したように怒り出しやがった!

何が琴線だった?!



「おまえらとは違って、あの人を生徒会の先輩として、人間として尊敬している。ただそれだけのことだ」

「はぁ?!嘘つくなこのスケベポンチが!」

「…おい!やめろ!」

「えぇい!竜堂、邪魔するな!」

「今はそんなことが問題じゃねえだろが!」

狭山の独りよがりな一触即発を、思わず制止してしまう。

間に入ってしまった。

協力してもらうのに、ケンカを売るんじゃない!

スケベポンチ?…新しいのか古いのか。




これはもう、ダメだ。

狭山おまえ、使えるのか使えないのか、わかんない。





「…あの。生徒会長、二村さん…」





狂犬のように二村さんを睨み付けて唸っている狭山を背にして、頭を下げる。




「ご協力、お願いします…」




…あえて、同じ土俵に立ち、奴らを迎え撃つ。

こんなやり方は間違っているのかもしれないけど。




でも、関係ない男子生徒を巻き込んで傷つけたことは、許されない。

敵討ち…と、カッコいいことは言わないが。

ブッ潰してやらないと、怒りが治まらないのは、事実だ。