王子様とブーランジェール





余計な心配だっただろうか。

セクハラだろうが、何だかんだ和気あいあいだったし。

…仲良くやっていた二人に嫉妬したのは、言うまでもない。俺も案外小さいな。




いや、あのセクハラの光景が和気あいあいに見える俺、今の俺、きっとおかしい。

桃李がセクハラ受けてんのに、松嶋と仲良く和気あいあいに少しでも見えただなんて。

…応戦する気力もないとは。

無意識のうちに、結構メンタルやられてる。




他人の心配をする前に、自分の心配をしたらどうだ。

そう、思い知らされた瞬間でもあった。

正直、二人のあのテンションに着いていけねえ…。

乗っかれなかった…。




帰り道はどことなく孤独だった。





この心を癒すには、もう食べて寝るしかない。



「…今日は一段とよく食べるわね」



食事を始めてから、十数分。

口と箸が止まらない。

マリアが作った食事プラス、先日の貢ぎ物のひとつであったサーロインステーキ三枚を、にんにく塩コショウバターで自ら焼いてやった。

俺の食いっぷりに、マリアは多少ドン引きしている。

「…ストレスでもたまってんの?」

「聞くな。DKにもいろいろあんだよ」

すると、同じく横で食事をしていた秋緒がボソッと呟く。

「夏輝くんは胃を半分切除した方がいいんじゃないんですか。その暴飲暴食、将来絶対メタボになりますよ」

「食べた分はトレーニングでカロリー消費してますー?」

「今は良いと思いますが、歳を取ると基礎代謝が落ちてカロリー消費しづらくなりますよ?それに心疾患のリスクがぐんと上がります」

「うるっせぇな」



大量の食事を平らげた後は、ピンクを膝に乗せてソファーでひと休みする。

その間、ずっとピンクの頭や背中を撫で続けていた。

毛並みが気持ちいい。ドッグセラピーだ。癒される…。

このクソ犬もとうとう役に立ったか。

ただメシ食って吠えてるだけじゃなかったか。

「夏輝くん、ストレスたまってるならアロマでも焚きましょうか。ヒノキの香りは癒されますよ」

「うるっせぇな。好きにすれ。おまえが焚きたいんだろうがよ」

「まあそうです」




そのまま膝にいるピンクを撫でながら、惰性でテレビを見る。

秋緒の焚いたアロマの香りが鼻につく。

…これ、くっせえな。



すると、傍に置いてあったスマホのバイブが、短く何回も鳴っていた。