王子様とブーランジェール





「…うおっ!」



画面を目にした途端に、目と心臓が飛び出るかと思った。

心臓の変わりに変な声が出てしまった。



「お、おまえ、これ…」

「だ、だめ!だめ!見ないでぇーっ!」

そう叫びながら、桃李は俺の腕を引っ張っている。



パソコンの画面には、デカデカと。

白人の男女が裸で絡み合っている画像が…。

エロ画像…!

しかもこれ、後夜祭で花火をバックに…の体勢じゃねえか!

松嶋、おまえの持ちネタか!



桃李がこんなものを…!



「ち、ちち違うの!ま、ま、松嶋が勝手にいじって、消えなくなっちゃったの!わわ、私じゃないぃっ!」

放心だ…。

何も言葉が出ない。

すると、松嶋はそのやり取りを見て腹を抱えて大爆笑している。

やはり、おまえのイタズラか…。

「ぶひゃひゃひゃ!神田さん、何やってるんですかー?エロいですよー?欲求不満ですかー?」

「ち、ちち違うよぉー!松嶋のバカ!」

ため息が出た。

「松嶋、おまえなぁ…」

「ぶひゃひゃひゃ!桃李がヨーロッパの文化を調べるって言うからさ?じゃあヨーロッパのセックスの文化でも勉強したらいいんじゃね?って、出してやったのよ」

「この変な写真、消えないの!消えないのおーっ!夏輝、消して!消して!」

桃李は手にマウスを持って横にブンブンと振っていた。

「………」



あのなぁ…。




「…桃李。マウス振るだけじゃ何も出来ないぞ。このバツのところクリックしたら消える」

「え…あ、本当だ。夏輝すごい」

「………」



タブを閉める方法なんぞ、幼稚園児でも知っとるわ…!

おまえええぇぇっ!!



…と、雷落としをしたいところだが。



そんなパワーは残されておらず。

今ので一気にどっと疲れた。

腹の底からため息が出る。



「…俺、帰るわ。後少し頑張れ」



カバンを担ぎ直してその場を離れる。

「…え?帰んの?」

「あぁ。疲れた」

陣太の横を通り過ぎ「じゃ」と手を上げて立ち去る。



「な、夏輝!ま、待って!お腹すいたの?!」



桃李が俺を呼び、引き留める声がしたが。

聞こえないフリをして、資料室を後にした。

余計な心配してるんじゃねえよ。いつも俺は腹減ってるように見えるのか。腹減ってることは減ってるが。




…何だか。怒る気力すらない。



襲撃事件にもイライラして。

あいつらにまで、イライラする。

イライラすんのって、結構パワー使うんだな。

パワー切れだ。もう疲れた。