王子様とブーランジェール





しかし、軽く別の問題も生じてしまった。

これとは、全然別件。




「あぁーっ。これじゃあ部活出られねえよ。やべぇ…」



5時限目終了後。

俺の隣で嘆く友人が、一人。



「陣太、勉強しなかったの?単元確認テストのこと忘れてたの?」

「忘れておりました…」

「シャトーブリアン食べてる場合じゃなかったワケだな」

咲哉と理人に言われていることが、グサグサと身にしみてるのか、一層落ち込んでいる。

「別に落ち込むことじゃねえだろ。赤点でも補習で許してくれるなら。追試より万々歳じゃね?」

「部活出れないのが痛い。今週大会なのに…先輩投げ込みすんのに捕手足りないって、どやされる…あぁ」



今日の5時限目、地理の時間。

先週行われた単元確認テストの答案が返ってきた。



『赤点該当者3名は、今日の放課後、社会資料室で補習課題があるので、集まるように』

『ええっ!』



珍しい。追試ではなく、補習?

ちなみに、補習課題とは、今回のテスト問題の内容に沿ったレポートを、社会資料室にある資料から抜粋しながら、より詳しく記述して本日中に提出することだった。

何だ。簡単じゃねえか。



いや、そこが問題ではなかった。



補習の該当者。

ここにいる友人、横川陣太と。



「桃李、おまえおフランス帰りなんだろー?ヨーロッパ得意だろ?一緒にやろうぜ楽勝楽勝!」

「う、うん。おフランス帰りだよ。でもフランスはヨーロッパにあるの?」



なんと。

桃李と…松嶋!



桃李、フランスがヨーロッパにあるのかどうか理解していないのは、大問題だぞ。学生として。いや、人間として。

いやいや。桃李が赤点該当者なんていうのは、想定の範囲内だ。この万年赤点該当者。



問題なのは…そこに松嶋がいることだった。



レポートを書き上げるまで、学校から出られない。

夕暮れ時の放課後だぞ?下手すりゃ夜になるまで…!

夜になるにつれて、生徒が一人、また一人いなくなる、薄暗い夜の学校。

そんな、夜の学校に、松嶋と桃李が二人きりでいるなんて。

夜の学校、いやらしい…!

これは…許されないわ!



先日の柳川との話を聞いているから、余計ざわざわする。



桃李が食べられてしまうかもしれない!




その事実を知った途端に、陣太に耳打ちする。



…おまえ、間違っても先に終わって先に帰るんじゃねえぞ…?

あの二人を!あんな狭い資料室に二人きり残しておくなよ!



「は?単純に心配か?行きすぎた心配性だなおい」