王子様とブーランジェール




確かに、これまでの情報からいくと、犯人像が一致していない。さまざまな層の野郎がこの事件に関わっている。

昨日増えた新たな被害者の情報のひとつには、中学生っぽい学ラン連中の加害者もいたということが判明した。

情報が欲しかったけど。

情報が増えれば増えるほど、特定が難しくなっている。

これは、もう…。



「…張り込んで、捕まえる」



ボソッと口にした一言に、急にシーンとなってしまった。



「張り込んで捕まえるって…正気?」

「それ、危険すぎやしない?大丈夫か?」

陣太のそのセリフに被せるように、咲哉が「ダメーッ!」と叫びだした。

「ダメ!ダメだって!…これから全国大会の予選があるんだぞ?!そんなケンカなんて学校にバレたら、出場停止になるだろ!先輩たちに何て言うんだ!」

「…だからって、このまま放っておくワケにはいかねえよ!もしもの時は俺が部を辞めれば…」

「何言ってんのあんた!大事な戦力がいなくなっても、チームとしては困るだろ!簡単に辞めるとか言うな!」

「あ…」

咲哉の表情を見て、しまったと思った。

完全、お怒りだ。

「そ、そうだな…ごめん」

「わかればよろしい!わかれば!」

ちょっと熱くなりすぎていた。

そうだ。部活のことがある。

迂闊に行動に出ることもできない。



じゃあ、どうすれば…!



「…夏輝」

「あぁ?」

理人が俺の名前を呼んだ後に、コーラを一口飲んだ。

そして、俺の方を見る。



「たぶんそのうち、奴らはシッポを出す。早いうちにね」

「はぁっ?!そんな保証、どこに…!」

「だって、ミスター出てこいや!って言ってんのに、こんなことちまちまずっと続けていないと思うんだよ」

それは、確かに。

俺をぶっ殺してやるって言ってるんだからな。

「奴らはそのうち、夏輝の前に姿を現すよ?そこを叩けばいい。それまで待て」

「理人、ケンカはダメだって」



何だか。宥められて、言いくるめられたような気がする。

ちっ…。



「…わかった。理人の案、受け入れてやるよ。だけど、その代わり、咲哉と陣太も十分注意してくれよな?何かあったらすぐに連絡よこせ」

「大丈夫大丈夫!俺んち学校からバス一本だから。あんな定山渓の手前の田舎の地域なんて、さすがのヤンキーも来ねえよ」

陣太はそう言って、笑っている。

「何で咲哉と陣太だけに注意喚起してんの?俺は?」

「おまえみたいなガタイのいいヤツを襲うヤンキーなんかいるか」

「ひどいこと言うね?南区はヤンキーよりクマに気を付けろって」