王子様とブーランジェール




知らない男子生徒ではあるが、その見てくれは一目見たら驚きの声が出てしまう程であった。

目元、頬が赤く腫れ上がり、変色して、まさに顔がボッコボコともいえる状態。

半袖のシャツから伸びる腕にはあちこち擦り傷があった。

『け、ケガ?だ、大丈夫か…?』

『昨日、学校の帰りに地下鉄を降りたら、知らない不良たちに連れて行かれて絡まれて…』

それで、ボッコボコにされたというワケか?

…しかし、なぜ。

なぜ、俺のところに来るんだ?

だなんていう理由は、すぐ明らかになる。



『…で、その不良たちがこれをミスター星天に渡せって…』



そのボッコボコな男子生徒がポケットから取り出したものは、しわしわになった二つ折りの紙切れだった。

『…これを、俺に?』

男子生徒は頷く。

開いてみるが…ん?んん?

首を傾げたくなるというか、なんともコメントし難い内容。

何だこれ…。



《ミスター出てこいや!》



と、スマホぐらいの大きさの紙いっぱいに、大きく明朝体で書かれていた。

これ、パソコン使ったのか?



出てこいや!って…これ、ネタ?

あの某格闘家の?

…だなんて、このナーバスな状況で突っ込めるものか。



『で、ミスターに言っとけって。「出てこいや!ブッ殺してやるからな?!」って…』



は?ブッ殺してやるだと?

だいぶイラッとする。

上等だ。てめえらが出てこいや。



『…どこの誰だか、名前言ってなかったか?』

すると、男子生徒は首を傾げる。

『さあ…制服着ているヤツもいたけど、着崩していたから、どこの生徒かは…ジャージ姿のヤツもいたし。三人だった』

『三人?!』

三人がかりで一人を狙う?!

なんて卑怯な連中だ!

『ど、どこで?!地下鉄…』

『…あ、琴似駅。改札出て地上に出たらすぐに絡まれて…』

『…わかった。ありがとう。…あ、ケガ大丈夫か?骨折れてないか病院行った方がいい』

『あ、うん…』



ブッ殺してやる?

上等だ。

真っ直ぐ俺んとこ来いや。

10倍返しでギッタギタに殺ってやる。

このクソ不良どもが。




…しかし、俺の前にはそのクソ不良どもは現れず。



翌日、同じようなシチュエーションで、また来客が。

今度は気弱そうな三年の男子。

学校帰りに一人でいたところを狙われる。

地下鉄を降りて地上に出たところすぐ絡まれるという。