王子様とブーランジェール





「…昨日いきなり絡んで殴ってきた不良が、これをおまえに渡せって…じゃ、そういうことだから」

「ち、ちょっと待って!」

その2年が俺らに背を向けて歩きだそうとしていたところ、引き留める。

しかし、彼は立ち止まるのみで、こっちを向かなかった。

そして、ボソリと呟く。



「…勘弁してくれよ…」



その一言に、胸が痛む。

言葉が詰まって、更に痛い。



「ちょっと、何それ」



言葉を出せないでいると、隣にいた理人がそう言いながら、その2年に近付いていった。

そして、隣に立って彼の顔を覗き込んでいる。



「…は?…は?」

「勘弁してくれって言ってるけどさー?これって夏輝に対する八つ当たり?だっせぇ」

「…はぁ?何だおまえ!」

理人にそれとなく咎められ、ムキになる2年の男子。

しかし、そのかかってきた様子を見て、理人はニヤリと笑う。

「だって、絡まれて殴られたこと、夏輝のせいだと思ってんだろ?男としてダサくない?」

「…理人、やめろ!」

制止すべく、理人の背中を引っ張る。

「俺が絡んでんのは間違いねえんだから、仕方ねえだろ!」

「でも夏輝は心当たりないんだろ?」

「そうだけど!…でも、そんなことより」

俺達のやり取りを呆然と見ていた2年の男子生徒。

俺が振り返ると、ビクッと体を震わせていた。

「…そんなことより、教えてほしいんだ。何時くらいにどこでどんなヤツらにやられたのか。相手の特徴詳しく」

胸ポケットからシャープペンを取り出す。

先ほど貰った二つ折りの紙切れの裏をメモ代わりにした。

「な、何でそんなこと…聞いてどうすんだよ」

「出来るかどうかわからないけど、犯人見つけてぶっ潰す」

「は、はぁっ?!」







…こんなにも目まぐるしい状況なのに、何が起こっているのか。

どこに立たされているのか、わからない。

俺は今、いったいどんな状況に立たされているのだろうか。

突然として現れた敵が…見えない。





それは、一昨日の出来事だった。

昼休みに教室でいつものように弁当を食べている最中、俺に来客があった。

また狭山か?それとも小笠原たちか?

うんざりしながら教室の外に赴くと、意外な来客だった。



『あの…竜堂くん』

『…えっ?!』



男子生徒。知らない人。