そんな夢のような話を冗談ふざけ合って話しながら、歩いて教室に向かう。
今日は俺の誕生日。
…だが、それは『ミスターの誕生日』という、一大イベントであるということを、この後思い知らされる。
階段を上りきって四階のフロアに到達すると、人の声で一段と騒がしくなっている様子だった。
何だ何だ。今日は随分と騒がしいな。
先に前を歩いていた咲哉が、「おおっ!」と声を出す。
「教室の前…女子だらけ!」
「えっ!」
俺の教室の前、女子だらけ。
…このフレーズ、嫌な予感しかしない。
しかし、それに気付いた時点では、もう遅い。
俺はすでにその女子の前に堂々と姿を現してしまっていて…。
「…あっ!来た!来ましたよ!夏輝様よぉーっ!」
「きゃーっ!16歳になられてもお素敵ぃーっ!」
…すでに、ロックオンされていた。
1年3組の前には、女子という女子が集まっている。
ざっと30はいる。…大名行列、増えている!
そして、俺を眼中に入れた女子たちは声を揃える。
『夏輝様、お誕生日おめでとうございまぁーす!!』
声、デカい!!
危険を察知するが、逃げる間もなく女子の集団に取り囲まれ、四方八方塞がれる。
こいつら、早っ!
「夏輝様、お誕生日の今日は一段と美しく、輝いて見えます!」
一段と…別にお誕生日だからって、特別なオーラを放っているつもりはないですよ。
オーラを操れる人種じゃねえし。タダの日にタダのDKだっつーの。
「夏輝様、お誕生日おめでとうございます!私、プレゼントはおコーヒーお持ちしました!」
おコーヒー?何でも言葉の最初に『お』を付ければ何でも丁寧語になると思ってんな。それは間違いだ。
「夏輝様、この素晴らしい良き日にあなたを生んでくださったお母様に感謝です!」
素晴らしい良き日って、何でもないタダの普通の平日に帝王切開で生まれただけなんだけど。
しかも、会ったことのないうちのマリアに感謝しちゃうの?
「夏輝様、私、シャトーブリアン!」
山田フリージアだ。また左横に密着しかかってる。
やめてやめてやめて…。
シャトーブリアン?山田が?
山田の腹肉の中にシャトーブリアンこさえているとは思えない。
すると、山田がまたしても顔を近付けてくる。
息がフッとかかった。
「夏輝様、ハピバっ」
「…うぎゃああぁぁ!」



