その奇襲に可愛い悲鳴をあげるが、両手を中途半端に上げたビミョーなポーズのまま固まってしまっている。
そんな中、松嶋が容赦なく堂々と後ろから腹をさわさわとまさぐるように触っている状態であった。
っていうか、突然現れて突然何をやっている!
女子に対して、そこ、触る?!
おまえは痴漢か!
「ま、ま、松嶋!さ、触んないでっ…もう!」
我に返った桃李は、その手を叩くように払いのけていた。
顔を赤くしながら。
松嶋は振り払われた手をとっさに挙上している。
「確かにウエストに肉が乗っかってるぜ?チアの衣装を採寸した時にははなかったはずなのにな?」
「…えっ!ほ、ほんとっ」
「んでもって、顔もぽっちゃり。むくみだといいな?」
そう言って、桃李の両方の頬をつまんで横に引っ張っている。
「いたたたっ…」
「…あ。おまえの頬っぺ、触り心地いい。やわらか」
その光景を目にして、照れは一気に怒りへと変わる。
このっ…松嶋ぁっ!
俺のプチマシュマロを、誰の許可を得てそんなにベタベタと触っている…!
しかも、その頬っぺたは俺のサンクチュアリだぞ…!
この…痴漢男!
許されないわ!腹立たしい!
しかし、怒りを覚えている俺とは裏腹に、事実を突きつけられ、悲しみに打ちひしがれているヤツがそこに…。
「太った…やっぱり、太ったんだっ…」
目をうるうるさせて、泣きそうになっている…!
しかし、この男は容赦なく。
「太ったもんはしゃーない。泣いてるヒマがあるなら、ダイエットに励め」
「…うわあぁぁーんっ!!」
うんうんと一人で頷いている松嶋を置いて、桃李は泣き叫びながら、慌てて自分の席に戻る。
着席して、乱雑にカバンを開けては手を突っ込んでいた。
そして、取り出したものは、Y字の金属製の美顔ローラー。
先日、春愛が桃李にいくつか渡したダイエットグッズのひとつだ。
泣きそうな表情そのまま、その美顔ローラーで自分の顎を必死にマッサージし始めた。
って、またか!
その金属製の美顔ローラーの登場に、咲哉と陣太も体をビクつかせて驚いている。
「って、あれまだ持ってたのか…?」
「始業式の時にもやってて、糸田さんに没収されてたよな…?」
二人は、桃李の始業式での奇行を思い出したのか、ビミョーな表情を浮かべていた。



