王子様とブーランジェール





へ、下手なこと言えない…。

なぜ、こんなに必死になっているんだ。

さすがの桃李も、体重増加は気になるのか。

桃李がこんなに必死になるなんて、珍しいぞ。



俺がそれ以上、何も言わないでいると、今度は俺の傍にいる友人二人に問いかけていた。

桃李からこの二人に話し掛けるなんて、またしても珍しい。

余程必死のようだ。



「か、梶くん、よ、横川くん…私、太りましたか…?」

「………」



咲哉と陣太も何も言えないでいる。

この二人は、先ほど始業式の最中の桃李の奇行を間近で見てしまったから特に。

はっきりと「太ったな?」と言ってしまったもんなら、とんでもない剣幕になることを大方予想出来ているようだ。




ハムソーセージだの、プチマシュマロだの。

太ったことをはっきりと言ってみろ?

珍しくこれだけ必死になってるんだ。

恐らくヤツは、ラマダーン並みの絶食を敢行するぞ。




「わ、わ、私、太りましたか?か、梶くん、横川くん…」

「あ、あ…いや、ねえ…?」

「ま、ま、まあ…?」

「え?ふ、太りましたか?ふ、太ってないですか?」

「あー…その、なぁ?」

「いや、いやぁ…神田、肌白いな?し、白って膨張色だからさぁー…」

「ど、ど、どっちですか?」

「………」

桃李の必死の質問に、やはり困ってしまい、俺の顔をチラチラと伺ってくる。

俺に助けを求めてくるんじゃない。俺だってどう返せばいいのか困りに困っているんだ。

陣太、膨張色というワードは危険だ。アウトすれすれ。




別に、そのぐらい太ってたって関係ねえよ。

むしろぷにぷにな頬っぺた触りたい。頬擦りしたい。

俺のプチマシュマロ。

ギュッと抱き締めたら気持ち良さそうだ。



…だなんて、言えたらいいのだけど。

言えるワケがない…!



恥ずかしくなってしまうと同時に、顔が急に熱くなってしまい、顔を伏せる。

咲哉に「あんた何逃げてんの!」と頭をパシッと叩かれた。

逃げたのではない!自分の身を守ったと言ってくれ!

桃李にエロいことを考えた挙げ句の赤面した顔を見せられるか!



「ではでは。太ったかどうだか、確かめてあげましょー!」



そう言いながら、俺達の前に突然軽快に現れたのは、松嶋だ。

「そーれっ!」と言い、背後から桃李のお腹を両手でガシッと握るレベルで掴んでいる。

おまえ…!



「…きゃっ!」