王子様とブーランジェール





その姿を目にして、息が詰まりかけた。



嘘っ…!



理人の後ろから、ひょこっと現れる。

こっちの様子を伺いながら、しずしずと頭を下げていた。

細い腕には、紙袋がたくさんぶら下がっている。



「…桃李!」



と、叫んで一目散に席を立ち、駆け寄って行ったのは秋緒だ。

俺は、立ったまま遠くから見てるだけ…。



「あ、秋緒」

「どうしたんですか?フランスからいつ帰って来たんですか!」

「さ、さっきだよ。車から荷物降ろしてる時にちょうど理人が通りかかって…」

隣にいる理人は爽やかに笑顔を見せて…俺にはドヤ顔に見える。

「そうそう。秋緒のために連れてきたんだ」

「理人くん、ありがとうございます。桃李、こっちに来て座ってください」

「あ、うん!」

秋緒が桃李の手を牽いて、こっちにやってくる。

「おぉー!桃李じゃん!」

「あら、桃李!久しぶりねー?こっちに座りなさい!」

すると、アマゾネスたちも久々の桃李を喜んで出迎えている。

マリアは桃李を俺の座っていた椅子に座らせた。

席、取られた…。

「フランス行ってたってホント?」

「は、は、はい。竜堂家におみやげたくさん持ってきました」

手に持っていた紙袋を降ろして、がさがさと雑に開けている。

「わぁー!フランスの?お菓子?」

「かわいいー!」

「あ、おばさまにはワインのおつまみで、バゲット持ってきました。うちのお母さんから…」

「ありがとうね。桃李とりっひにお肉焼いてあげる」



アマゾネス軍団が二人をおもてなしし始めたところで、俺は家の中に入る。

ジンギスカン鍋の準備だっつーの。

しかし、なぜか足取りや動きは不自然なくらい角ばって、早くなっていた。

せかせかと冷蔵庫を開けて、もやしと玉ねぎを取り出す。



帰ってきた…。

桃李が、帰ってきた…!



感動、嬉しさのあまり、胸がいっぱいだ。

じーんとしてる。




しかも、帰宅直後に俺の家に来てくれるなんて…!

…いや、秋緒目当てだろうけど。

いやいや。そんな理由でも構わない。

会えたことには違いない。

その姿を目にしただけで、もう十分だ。

理人、グッジョブだ。おまえ、良い仕事してるわ。

おまえの好きなジンギスカン鍋、作ってやる。



嬉しい…!



まな板を前に、包丁を握りしめたまま、感動にうち震える。



相変わらず、かわいいわ…。