王子様とブーランジェール





「そういや、最近高校生のお客さんに『竜堂夏輝くんのお姉さんですか?』って聞かれるんだけど、なっち、何か問題でも起こしたー?まさか、また不良に付け狙われてるとかじゃないわよねー?」

さりげなく俺にも、攻撃の飛び火がかかってくる。

っていうか、春愛の店でもまたそれか…。

どこまで認知度高いんだ。ミスターってやつはよ。

「春姉ちゃん知らないのかい。夏輝はこの間の学祭でミスター星天になったのだよ」

肉を食べながら、冬菜は『うひひひ…』と、怪しく笑っている。

いい加減その笑い方やめんか。

「へぇー。ミスター星天。あんたが。何で」

「知らねえし。俺もわからん」

…いや、学祭での反省点はある。

目立ち過ぎた。

前夜祭でのこと、見せ物小屋のこと、うちわのイラストのこと、浴衣姿でわたあめ売ったこと、後夜祭の飛び入り参加など。

すべてにおいて、目立ち過ぎた。俺祭りみたいな。

ミスコンのことなんて頭になく、後先考えなさすぎた。

何でこんなことになっちまったか、わかんねえ…。

「とりあえず、わたくしは夏輝の私物をフリマアプリで高額で売ることに致しますわ。使ったストローとかバスタオルとかティッシュとかねー。10倍の値段で売りますわ。うひひひ。使用済みティッシュ、用途によっては一枚一万円」

「…絶対やめろ!!」

何に使ったティッシュが一万円?!

冗談じゃねえ。絶対にやめてくれ。

俺はゴミひとつ出せないのか!



「ちょっと、次ジンギスカンやんない?冷凍庫に味付けジンギスカンあるよねー?3パック780円のやつ」

「夏輝、ジンギスカン鍋持ってきなさい。ついでに野菜切ってきて」

「はいはいはい。めんどくせー」

「めんどくさいとは何ですか」

「…じゃあ、おまえがやれ!」

ちっ。女四人もいて、何で俺が準備係なんだ。

末っ子は立場が狭い。



「すみませーん。こんばんはー」



ジンギスカン鍋の準備をするために席を立つと、庭の向こうにデカいヤツが立っている。

ビニール袋を手にぶら下げている。



「おー。理人だ理人」

「え?りっひ来たの?久しぶり!でっかくなったねー」

春愛はこいつに会うのは久しぶりだったか。



「おまえ、遅くね?」

「ごめんごめん。付き添いの準備待ちしてた」

「付き添い?」



だが…。

幸せは、すぐそこに。



「こ、こ、こんばんは…」