王子様とブーランジェール





「そういや、今日バイトでさー。高校生バイトの子に夏輝のこと聞かれた」

「は?俺のこと?」

「そー。『竜堂さんって、ひょっとして星天に弟いますー?』なんて。『いつも一緒に少女漫画読んでる弟ならいるよー』って言ったら『キャー!何の漫画ですか?』ってさ。さすが有名ですな。ミスター星天」

またか…。

「やかましいわ。それに、いつも一緒に漫画読んでるとか余計なこと言うな」

冬菜はなぜか俺のミスコンの顛末を知っている。

星天にいた知り合いから聞くんだろうか。

「うひひひ。爽やかイケメンが少女漫画大好きとか設定面白すぎじゃございませぬか?それに嘘ではなく事実ですよー」

「笑い方きもっ。別に読んでるだけで大好きってワケじゃない。噂って何倍増しにもなるから余計なこというなよ?」

「了解であります!隊長!うひひひ…」

その笑い方とその喋り方やめろ。

隊長って誰だよ。気持ち悪っ。

了解とか言いつつ、こいつ、絶対言ってる。何か言ってる。気を付けないと。



しかし、理人、遅いな。



すると、そこへ。

予想してなかった帰宅者が、一人。



「ただいまー!…あれ?今日焼き肉?」



全員で思わず注目する。

あれ。今日、帰って来る日だっけ?



一番上の姉・春愛、22歳。

社会人三年目のアパレル店員。

ギャルに人気のショップに勤めており、本人自身もギャルっぽい服装をしている。

春から家を出て職場の徒歩圏内の地域で独り暮らしをしているので、普段はこの家にいないのだが…。



「あら?春愛、今日帰って来る日だっけ?」



母親がここにいる皆の代弁をして、質問する。

すると、物凄く不服そうな顔をしている。

「帰って来る日って…お母さんが言ったんでしよ?今日お父さん帰ってくるって」

「あ、そうだったかしら」

「…ええっ!!」

意外な事実に、他三人は驚愕の叫び声がハモる。

親父、今日帰ってくんの?!

「ち、ちょっとお母さん!どういうことですか!お父さん帰って来るって、何で黙ってたんですか!」

一番食いついたのは、秋緒だ。とっさに立ち上がって母に抗議している。

親父好きだからな。

「いや…いつ帰って来るか曖昧だったし…ちょっと忘れてただけ。あははは」