王子様とブーランジェール




「秋緒、おかえり。米持ってこっちに来なさい」

「はい」



そして、淡々と家の中に入っていく。

焼き肉に喜びはないのかおまえは。

やはり超合金ロボット女だ。

双子って似るもんなのに、俺達は全然似てない。見た目も性格も。

遺伝子って不思議。



「夏輝くん」



秋緒が茶碗に盛った米を持ってウッドデッキに来るなり、俺に話し掛けてくる。

「あぁ?何だ」

不機嫌気味に返事をするが、ヤツはそんなの構わずに淡々としていた。

「学校の人に夏輝くんのことを聞かれました」

「は?何で?」

「『竜堂さんって、あのミスター星天の竜堂夏輝くんと双子なのー?』と聞かれました。言いたくもないんですが、『はいそうです』と答えたら、その人は『キャー』と叫んでました」

「………」

「何ですか。ミスター星天って」

そっちの話か…。

ヤバい。秋緒の高校にまで知れ渡ってるのか?

って、ちゃっかり『言いたくもないんですが』とか言ったな。

さりげなくディスってんじゃねえよ。

とりあえず「知らねえ。そんなことよりA5ランク焼いてやる」と、はぐらかして質問には答えないでおいた。

「じゃあ牛タンも焼いてください」と、話を逸らすことが出来たが。

「秋緒ー?りっひ来るわよー」

「あ、理人くんですか」




すると、もう一名帰宅。



「…あっれー?今日焼き肉なの?」


膝ぐらいの高さのある柵を跨いで、庭に入ってくる。

派手でもなく、地味でもない、ましてや秋緒のように常に山登りをする服装でもない、Tシャツデニムの普通の格好をした普通の女が。



二番目の姉、冬菜だ。

イオンのフードコートでのアルバイトから帰ってきた。

今年で19歳。市立の看護大学の一年生。



「冬菜おかえり」

「ただいまー。あっ、お肉美味しそう!焼いて焼いて!」

駆け寄って来て、キャンピングチェアを出して座っている。

「あんた米持ってきなさい」

「えー。お母さん持ってきてー」

「たわけ。自分でやりなさい」

しかし、自分では絶対に取りに行かず、隣にいる秋緒の米をつまんで食っている。

そのうち無くなってしまい、秋緒が米を取りに行く羽目となっていた。

なんて図々しい女だ。

この冬菜とかいう姉は、三人の姉の中では、一番見た目が普通だが、実は一番のキワモノである…。