ようやくいい感じに火がついてきた。
これだともう肉焼けそう。
そう思ったらすぐ、家の中に入り冷蔵庫から黒毛和牛を出し、茶碗に米をついだり、皿をさっさと運ぶ。
「…あ。万智も誘おっとー」
そう言って、マリアは電話をする。
万智さん…理人母も呼ぶのか?今夜は呑んだくれの会も開催か。
「…あ、まっちー?これからヒマー?焼き肉するから来ないー?」
すると、ピンクが家の中にとことこと入ってきた。
「…おぉい!ピンク!外から帰ってきたら、足を拭け!」
慌てて雑巾を持ってきて、足を拭いてやる。
ちっ。中途半端に家に入ってくんな。
どうせまた外に出て走り回るくせに。
ついでに床も拭く。
すると今度は、マリアが「ええっ!」と叫んでいる。
今度は何だ。
「…えぇー!万智、これから夜勤なのー?りっひは?家にいる?うちに呼んでよ!呼びなさい!呼びなさい!」
そして、電話を切ってこっちにやってきた。
「夏輝、りっひ呼んだから。今から来るって」
「ええっ!」
今度は俺が叫んでしまった。
理人を呼んでしまったのか。
「万智夜勤だから、りっひおうちで一人なんだってー。ごはんとか可哀想だから呼んだー」
「一人が可哀想って、もう高校生だぞ?羽伸ばして楽しくやってるに決まってるだろ」
女連れ込むとか、女連れ込むとか、女連れ込むとか…。
「何言ってんのよ、友達でしょー?それに和田家はマンションなんだから焼き肉出来ないでしょうが。あ、あんたその黒毛和牛一人で全部食べんじゃないわよ?秋緒と冬菜のぶん残しときなさいよ?りっひも来るんだから」
「はいはいはい」
ちっ。全員帰って来る前にさっさと食べてしまおうと思ってたのに。先手取られたぞ。
とりあえず、母一人、犬一匹とウッドデッキでコンロを囲む。
レア気味に焼いた肉を付属のタレを浸けて、米の上に乗せて食べた。
「…うぉっ!美味いぞこれ!」
「ちょっと、私にもちょうだい」
マリアはもうワインを飲んでいる。明日休みだから余裕かましてんな。
「あぁー。高級お肉に美味しいワイン最高ー。でもこのお肉油多いわね。胸焼けする」
すると、一名帰宅。
「ただいま。…今日は焼き肉ですか?」
芝生の向こうで突っ立って、こっちの様子をじっと見ている。
双子の姉・おかっぱ眼鏡の秋緒だ。
胡散臭い部活から帰って来やがった。



