王子様とブーランジェール





和室のど真ん中に、だらしなく。

大の字でうつ伏せに寝転がっている…。



制服は着ているようだが、所々乱れていた。

そして、紺色のハイソックスが、右足の爪先にのみ、被さってぶら下がっている。

もう片方は、そこら辺に散らかっていた。

生足、丸出し。



まるで、着替え半ばで、力尽きたかのように。



なぜ、ハイソックスを最後まで履けなかった?

なぜ、そこで力尽きた?

もう少し頑張れよ。



そして、その情けない格好のまま動いてないが。

寝ているんだろうか。



靴を脱いで、中に入る。

恐る恐ると傍に寄ってみる。

本当に、寝てんの…?



「お、おい…」



なぜか心配になってしまい、思わず声を掛けてみる。

すると、俺の声に反応したのか、大の字に寝てる体はピクリと動いた。

逆にビクッと驚いてしまう。

う、動いた…!



「なつき…」



俺の名前を呟きながら、上半身がモソッと動く。

体を起こしかけ、ゆっくりとこっちを向くが、パタッと力尽きて倒れた。

まるで、ネジの切れたおもちゃのように。



「ど、どうした…」



その様に不安になり、問いかける。

ボソッと返答があった。



「疲れた…」



疲れた…?

随分な消耗ぶりだな。

相変わらず体力ないな。おまえは。



謝罪会見を開こうと意気込んで来たのに。

この有り様じゃ、勢い殺されるわ。

唖然…。



「な、なつき…」



力尽きて倒れているヤツは、またしても俺の名前を呼ぶ。

声も、力なくて消えそうだ。



「…何だ」

「く、くつした…はかせて…」



…何だと?

靴下を、履かせろだと…?



更に唖然とさせられる。



おまえ、何を言ってるんだ。

俺は、おまえにとってはただの幼なじみだとか、友達の弟かもしれんが。

俺は、男だぞ…?

男子相手に何を頼んでるんだ…!



…と、言いたいところだが。

桃李を泣かせてしまったという負い目が、俺にはある。

さっきこっちを向いた時、両目が少し腫れぼったくなっていた。

あれからも更に泣いていたのではと思うと、強いことも言えない。



「なつき…くつした…」

「わ、わかった!わかった!」