心の奥底で、桃李は俺のことをそういうふうには見ていないと根拠もなく思っていた。
だから、この発言を耳にした時はショックだった。
俺は何でも完璧に出来るって?
俺のどこをどう見たら、そう見えるんだよ。
もし、俺が完璧な人間なのならば、おまえをこう傷つける発言なんかしない。
おまえを泣かせたりなんかしない。
もっと上手く立ち回れるはずなんだ。
少なくとも、目の前でおまえにわんわんと泣かれて。
どうしていいかわからなくなって、パニックになったりしない。
完璧な人間なんて、どこにもいやしないんだよ。
『…わ、わ、私だって…な、夏輝みたいに、自信持って強気でいたいよ?…で、で、でも…』
…自信?強気?
そんなもんなんか、ない。
現に、こんなことが起こってしまって、俺は自信を無くしてるよ。
おまえに嫌われたんじゃないかって…ビクビクしている。
恥ずかしいことに、弱気になっている。
ガラスに薄っすらと映った自分の顔、すげえ情けねえツラしてるわ。
『…その自信…わ、わ、私には…見当たらないのっ…』
…だから。
自信なんてものは、本当に持ち合わせていないんだって。
でなければ、5年間こんなにもうじうじと片想いなんてしていない。
もうどうにもならないぐらい好きなのに、今の関係が壊れるのが嫌だとかなんとか、そんなことにビビってる。
俺にだって、そんなもの見当たんねえよ。
自信満々で、強そうに見えるかもしれない。
何でも完璧にこなすように見えるかもしれない。
でも、肝心なところには一歩が出なくて。
素直になれる勇気がない。
理人の言うように、結局のところ、チキンなんだ。
俺っていうヤツは、実はこんなヤツ。
そんな風に、はっきりと言えたらいいのに。
おまえに。
気がつけば、差し込んでいた日差しの存在は消え失せて、外は薄暗くなっていた。
夕陽は更に沈みかけている。
体育館の方から、ざわざわと人の声や足音が聞こえてきた。
次第に生徒が次から次に姿を現していて、みんな正面玄関口に向かっているようだ。
後夜祭、終わったのか。
だとしたら、これからグラウンドで花火を打ち上げるとか何とかで。
みんな、グラウンドに行くのか。
その様子を、少し離れた廊下の突き当たりから見守る。



