王子様とブーランジェール





これは、大盛況と喜ぶべきでしょうか。



教室の戸口から、廊下にかけて伸びる列。

うちわを持った女子たちが、きゃぴきゃぴしながら並んでいる。

それを、陣太と咲哉が忙しそうに、女子を並ばせ場内整理している。



「もう一回見たい方は、また列に並び直してねー!」

「前編収録したDVDも販売するよー!完全予約で一枚1000円!予約したい方はクラスと名前書いて行ってねー!」



DVD販売…俺の耳は確かか。

それとも幻聴か?

売れる売れないどっちにしろ、恥ずかしすぎる事態じゃねえか。

何やってくれてんだおまえら…。



怒鳴りつけてやりたい気もするが、今は目の前にある仕事をこなさなければならない。

とりあえず、女子のうちわに飼い犬ピンクのイラストを描いて描いて描きまくる。

ちっ。いい加減腹減ってきた。

イラストのパターンも減ってきた。



時間が経つに連れ、女子の人数が増えてきている。

教室内は女子だらけだ。

陣太と咲哉だけじゃ仕事が回らないのか、松嶋も場内整理を手伝っている様子だ。



カオスだ。

この事態、まさにカオス!



「胸キュンシアター出演俳優さん、ここにいるよー!うちわに絵を描いて欲しい人、こっちに並んでくりー!」



松嶋の呼び掛けに、『きゃあー!描いて欲しいー!』『握手したいー!』と、きゃぴきゃぴした女子が更に列に並んでしまった。



松嶋…!

おまえ、わざわざ客を増やすな!

こっちは、右手が崩壊だ!



これは、罠だ。

罠にかけられた気分…!



…思えば、あいつら。

わざわざ『何もしなくてもいいから、ここに座っとけ』とか、妙に優しかった。

まさか、これを狙ったんじゃないだろな。



これは、罠だ!



…と、思ったところで、この長蛇の列をそのままにするワケにはいかない。

このままじゃ、クラスのみんなにも迷惑をかけるぞ。

とりあえず、ノルマをこなさなくては。



再び、マジックを持ってせっせとイラストを描く。


もう、ピンクのイラストには限らず。

テキトーに猫、カエル、タコやイカのよくわからないバリエーションを増やす。

果てには、非常口の人形のイラストまで描いてしまった。

どんどんクオリティ下がる下がる。



「やぁーん!可愛い!何これ、鹿注意!の標識だぁー!」