王子様とブーランジェール




女子からうちわを受け取り、空いてるスペースにすらすらとイラスト描いていく。

桃李に描いたみたいに大きく描いたらひんしゅくだよなと思って、控えめに隅っこに小さく描いてみた。

「あの…昨日、前夜祭で格闘技やってた人ですよね?」

「うん、そう」

「あぁっ!わ、私、応援してました!」

「あ、そうなの?あれ、ただのケンカだから…はい、出来た」

描いている最中にも関わらず、話しかけられるが。

その完成品を手渡す。

「あぁぁっ!可愛いっ!ありがとうございます!」

二人で声をハモらせて、手を振って去っていった。

やれやれ。

あんな簡単なイラストで喜んでくれちゃって。

安いな。



ふう、と一息ついて、椅子に座り直すが。



「あのぉ…竜堂くん…」

「チワワ、私達にも描いて?」

「お願いします!」



また来た。

今度は三人組だ。

横で見ていたのか?



「あんなんでいいの?別にいいけど」

「わぁ!やった!」

「私の、ここに描いて!お願い!」



うちわを受け取り、マジックの蓋を開けて、再び。

今度は違うパターンにするか。

横向きのピンクの絵。

ぶっ…俺、うまくね?

毎日、ヤツの世話してるだけあって、特徴掴んでるな。



調子に乗る。



その結果。



「竜堂くん、私のにも描いてー!」

「やだー!かわいいー!私にも!」

「次は私のにも描いてー!」

「この胸キュンシアターの人ですよね?私にも描いてくださいっ!」

「描いてー!描いてー!」




もう…何匹、ピンクを描いた?

数えていられないぐらい、描いたぞ?

手が痛い…。




描き終えたと思ったら、次の人が来て。

また描き終えたと思ったら、また次の人が来て。

エンドレスだ…。

何のループ?





ふと、顔を上げる。





そこは、大変なことになっていた。





げっ…何これ!

列になってる…!



俺にチワワの絵を描いて欲しい女子たちが。

うちわを持って、教室内に列を作っている…!

絵を描くことに夢中で気付かなかった。



恐る恐る教室内を見回す。

行列は、ここだけではなかった。



「はいはい!胸キュンシアターのお客さんは、廊下に並んで!並んで!」

「100円玉用意してねー!両替出来ないからねー!」



えっ…見せ物小屋にも、列!