王子様とブーランジェール





ここぞとばかりに、ぞろぞろと現れた。

高瀬のゴリラや蜂谷さんのような、馬の骨が。



桃李をそんな野郎どもの餌食にさせるのは、断固阻止。

おまえらのケー番は俺の手中にある。

以上。ざまーみろ。



椅子に座って、そのカオスなうちわを使って自分を扇ぐ。



「な、夏輝…」

「…あ?」



桃李だ。まだいたのか。

両手でうちわを持って、しずしずと俺のところにやってくる。



「あ、あ、あのね…」

「何だよ」

そして、さっきあげたうちわを俺に差し出した。

「か、書いて…」

「は?」

「な、何か書いて…」



うちわに…書け?

俺に、書けって…?!



「はぁっ?!…って、何を書いて欲しいんだっつーの。悪いけど俺、こんな寄せ書きのセンスなんかねえぞ?」

卒業する先輩への寄せ書きも『おめでとうございます。高校行っても頑張ってください』しか書けない俺に、このバカはいったい何を要求するんだ。

とんだキラーパスだ。

「なんでもいいよ。何か書いて」

「ったく…」



何も書かれていない、無地のうちわを見る。

書き込み一発目、本当にどうしたらいいかわかんねえな。



「書いて書いて」

そう言って、桃李は、俺の目の前に置いた無地のうちわを覗き込んでいる。

「わ、わかった…」

か、顔近い…!



書いて書いて。

って、かわいくない?

かわいいわ…。



いろいろ考えた結果。

名案が思いついた。

ペンケースからマジックを取り出して、うちわキャンバスの真ん中にデカデカとすらすら書く。



「夏輝…」

マジックを持って書いているその最中。

桃李が呟くように話しかけてくる。

「あ?ちょっと待ってろ。大作作ってる最中だから」

「ケガ…大丈夫?」

「あ?大したことない」

「そう…」



そして、大作が出来上がった。



…おっ。俺、うまくね?

上出来だ。



「何なに。夏輝何書いてんの?絵書いてんの?」

隣にいた咲哉と陣太も覗き込んでくる。



「…これ、ピンク?」

「俺、案外、絵うまいな?」



おもいっきり、うちわのど真ん中に書いてやった。

犬…チワワのイラストを。

我が飼い犬の顔。そっくりだな。



そして、イラストの下におもいっきり書いてやった。



『男子はケー番書くな!』



魔除けのように、達筆で。